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学校施設

第67回 【教職員のメンタルヘルス】今こそ自力走行できる教員を

2020年6月15日
連載

手探りしながらの再開

可能な限りのコロナ対策を講じて学校を再開してみたものの、再開前に教員たちが想定していた以上の事態が発生するので、先生方はその都度、微調整を繰り返しながら進んでいるようです。完璧な方法がないだけに教員たちの試行錯誤が続きます。

職員会議で問題提起

例えば、熱中症対策のため、子供たちに水筒を持参させているのですが、水筒の置き場所や、飲ませるタイミング等について頭を悩ませている学校もあるようです。

ある小学校(本稿ではD小学校と呼ぶ)では、職員会議で水筒の置き場所について、まとめて一か所に置くのも感染が心配だし、窓際の涼しい場所に並べるのも外へ落ちる危険性がある等々の意見。D小学校の校長は、敢えてここでは方針を示さず、先生たちにボールを投げかけました。

最近の若手教員は事務的な能力やPCの扱いもうまい。指示されたことは着実にこなす能力も持ち合わせていますが、それ以上の想像力が働かない。これではいつまでたっても校長を乗り越えるような人材が育たない。つまり、自ら課題を見つけ、解決法を工夫し、実行に移すという「自力走行ができる」教員が育っていかない。その点に校長は不満や危機感を感じていました。

学年主任が若手リード

すると、職員会議では、机の横のフックに水筒を掛けることで解決が図られたのですが、それで納得した教員がいる一方で、1年生の学年主任(本稿では仮にK先生と呼ぶ)が若手教員を集めて語り始めました。「水筒の肩掛け紐をそのまま机の横のフックに掛けると、紐が長すぎて水筒が床について汚れてしまいます。そこで、水筒の紐の結び方をこういうふうに2重にして掛けるように子供たちに呼びかけませんか」と実演しながら仲間の教員たちに説明をしていました。

その光景を見ていた校長は思わず笑みを浮かべました。そこには、校長に評価されることを必要以上に期待したり、叱責されることを恐れて保身に走ったりする姿はありません。

同じベクトルで前進

校長も「結果のみ」を評価するのではなく、その「プロセス」にこそ評価の重みをおくことで先生たちに安心感が拡がったのでした。このように、当分の間はコロナ対策に日々神経をすり減らしながらも、管理職と教職員が“同じベクトル”を向いている限り、着実に前へ進んで行けるのではないでしょうか。

今夏は過酷な環境下

また、ある自治体では、6月第2週目までは「分散登校」で学校再開、第3週目より平常授業で給食も開始。7月にはお弁当持ちの土曜授業を行い、8月はお盆明けより8月一杯授業を敢行するようです。教員のメンタル予防の観点から申しますと、約3か月間の長い休みの後、いきなりトップギアでスタートすると、早い人で最初の2週間で不適応を起こす教員が発生します。しかも、教育課程の完全実施に「前のめり」になる余り、7月に土曜授業(お弁当持ち)を含めた週6日の授業を強行し、とどめは8月の酷暑の中、マスクをして、冷房かけて、窓を開けるという過酷な環境下での授業です。

不適応起こす教員に注意

それでも先生方は頑張ってしまいます。しかし年配の教員や基礎疾患を抱えた人の中には、我々の想像以上に厳しい毎日を送っている方もいらっしゃいます。管理職は、例年以上に健康経営にご尽力頂き、子供も教職員も今年の夏を無事に乗り切れますように祈念致しております。


筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、教職員メンタルサポートネットワーク協会代表、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年6月15日号掲載

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