前回は、アドラー心理学を活用したS小学校の「安心して働ける学校組織作り」の実践を紹介する中で、「勇気づけ」の定義やその内容の一部、例えば①縦関係よりも横の関係を重視し、評価することよりも「感謝」を伝える(アイメッセージ)ことが大切、②「失敗」を「経験」に置き換えることで物事を多面的にみることの大切さ、③論理的結末を体験させることが成長のチャンスである等について述べました。
今回は同校がどのような取組にチャレンジしてきたかを紹介します。
合言葉は「まず、やってみよう」。「話し合いよりまず実践」、「原案尊重、主任を信じる」、「失敗ではなく、経験を次に活かす」
休憩時間の確保→自由な空間・時間から豊かな発想が生まれる。毎日15:30になると校内に一斉放送が流れ、教員たちが職員室の一角に戻ってきます。そこで始まるのは「ティーブレイク」。お茶したり、バリスタしながらゆったりとした時間を過ごします。その場の教員同士の会話が職員会や学年会の代わりになっています。そして16:15になると再び持ち場へ戻り、16:50になると再び音楽が流れ、校長が教員に帰宅の準備を促します。
「会議の原則」→費用
(人件費)に対して、効果のない会議は認めない。「どうしましょうか?」という会議は認めない。「意思決定」をしない会議は不要。できない理由、やらない理由の羅列をする会議は不要。職員会議=2カ月に1回30分 職員集会=1週間に1回15分 校内研修=1カ月に1回40分 各種委員会1カ月に1回40分
学校における一般的な意思決定の流れは、起案⇒部会⇒企画委員会⇒職員会議となっており、結論が出るまでに約1カ月を要します。S小学校では一般企業や役所等で採用されている「起案」⇒「決済」という「回議システム」を採用し、半日で物事の意思決定がなされるシステムになっています。(例 ①起案者⇒②学年主任⇒③教頭⇒④校長という順番で「決済」をもらえば、即実行に移す。起案内容によっては①~③で済むものや①~③~④の順序のものもある)。
部会の廃止→「1人1主任制」の採用。原則として複数の部会には所属しない。例えば国語科主任になった人は、1人で1年~6年までの国語科の行事について考える。但し、運動会や学習発表会等、学校全体にかかわる行事については、各学年から人材を募る。新採教員は必ずどこかの主任のサブにつき、来年度は独り立ちできるように準備する。その目的は、①各自の成すべきことを明確にする、②責任の所在を明確にする、③結果が直接的にフィードバックされる等にある。
※例えば、新採教員が担任をしているクラスが落ち着かなかったら、学校長の判断を仰がなくても、担任外教員の判断でそのクラスに介入指導をしても良いことになっている。
S校の各月の平均超過勤務時間は次の通りでした。4月44時間、5月42時間、6月42時間、7月42時間、8月8時間
筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、教職員メンタルサポートネットワーク協会代表、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年4月20日号掲載