2018年度「がん教育」の実施状況は、全体が2万3000校(61・9%)で、実施率は前年より5・1ポイント上昇。中学校では6・6増加した。学年は小学校6年、中学校3年、高校1年が最も多く、93%近くが「体育・保健体育の授業」での実施だった。文部科学省が実施状況調査を公表した。
人口100人の村があったとする。隣村から帰った村人1人が新型コロナウイルスに感染し発病した。慌てた村人の1人が50人分のマスクを買い占めた。それを見た10人が5人分ずつ買いだめした。最初に感染した1人が他の村人への感染予防のためマスクを買おうとした。でも100人分の在庫しかないため売り切れだった▼やがて感染は村中に広がって、買い占めた人たちも感染から逃れられなかった…小学生でも分かる寓話である。自分達だけが助かろう、さらには便乗して金儲けしようという発想が世の中に蔓延してしまった。しかしグローバル化ですっかり狭くなった世界で、自分だけが難を逃れられるという発想は、かなり非現実的だ▼70億人以上では遠い世界の他人事と思える事が、手が届くし呼べば聞こえる範囲の100人の村の出来事だと思えば、まわりまわって自分事だ。求められるのは他者の状況や立場を推測できる想像力。道徳的には「思いやり」ではなかろうか。
文科省の「平成30年度がん教育の実施状況調査」によると、がん教育を「実施した」学校は小学校1万1502校(56・3%)、中学校7919校(71・4%)、高校3602校(63・7%)、全体で2万3023校(61・9%)。17年度は2万1239校(56・8%)だった。
実施した教科・領域は「体育・保健体育の授業」が最も多く、実施した学校全体では2万1383校(92・9%)。その他の実施方法や学校種別の状況は下の表の通り。
扱った内容は「がんとはどのような病気でしょうか?」が実施した学校全体の86・0%、「がんの予防」が84・8%、「我が国におけるがんの現状」は62・0%、「がんの早期発見とがん検診」が46・7%などの順で多かった。
外部講師を活用した学校は3007校で8・1%。「がん経験者」や「薬剤師」、「がん専門医」等が多く、効果として活用校の73%が「健康と命の大切さについて主体的に考えることができた」と回答。次いで「がんに関する知識・理解が深まった」、「がん教育を強く印象付けられた」等の理由もあった。
外部講師の活用には「事前打ち合わせを行わないと、講師の話す内容と学校の要望にギャップが生じる」、「年間指導計画に位置付けないと、指導時間の確保が難しい」、「講師の確保が難しい」、「経費が確保できない」といった回答が多かった。
その他に工夫したこととして「養護教諭と担任教師とのTT指導」、「喫煙防止教室や食育指導などと関連して実施」、「保護者も参加できる日程(公開日、参観日等)を設定」等の事例があった。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年3月16日号掲載