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国際交流に向けワクチン接種を 侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)対策

2020年2月17日
白鷗大学教育学部 岡田晴恵教授

白鷗大学教育学部 岡田晴恵教授

東京五輪が開催される。国際大会期間中に注意しなければならない感染症の1つが「侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)」および「髄膜炎菌性髄膜炎」だ。今必要な感染症対策を、白鷗大学教育学部の岡田晴恵教授に聞いた。

2013年度の感染症法改正によって「侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD)」に組み入れられた「髄膜炎菌性髄膜炎」は、細菌性髄膜炎の1つで、髄膜炎菌に感染することで起こる。健常者も鼻咽頭に保菌しているが、髄膜炎菌が粘膜を通して血液や髄膜に侵入すると発症する。感染経路は、せきやくしゃみ、ペットボトルのまわし飲み、食器の共有などがある。

潜伏期間は1~10日以内で、突然発症する。初期症状は風邪に似ているため早期判断が難しいが、発症後13~20時間頃には皮下出血や発疹が出たり、息が苦しくなったり、光を異常にまぶしく感じるなどの症状が起こり急速に悪化する。劇症型の場合、1~2日で死に至るので、日本でも致命率が19%にのぼる。回復した場合でも11~19%の割合で難聴や神経障害、四肢切断などの重い後遺症が残る。

■集団感染の予防策を

注意を喚起する入寮者向け配付資料の例(出典:岡田晴恵・著『学校の感染症対策 改訂版』東山書房)

注意を喚起する入寮者向け配付資料の例(出典:岡田晴恵・著『学校の感染症対策 改訂版』東山書房)

国内でのIMDの診断数は年間30~40例ほどで、特に15~19歳での感染が多い。髄膜炎菌は飛沫感染で広がり、濃厚接触によりアウトブレイクが起こりやすいので、学生寮などの集団生活が感染リスクとなる。過去にも寮での集団感染事例が国内で報告されており、寮生活やスポーツ合宿、国際交流行事などでは特に注意が必要だ。

これを受け(公社)日本小児科学会では現在、学生寮などで集団生活を送る人を髄膜炎菌ワクチンの推奨接種対象者としている。日本では任意接種だが、4月以降の新学期に合わせて2~3月中の接種が望ましいため、入寮予定者への情報提供を配付資料や説明会で行う寮もある。

一方、国立感染症研究所が月々報告する病原微生物検出情報では、40~70代前半の患者報告数も多い。岡田教授は「寮生に限らず、教員もワクチン接種が必要」と語る。

■国際行事に備える

日本では感染例が比較的少ないIMDだが、世界的には今でも流行がみられる。昨年には、ラグビーW杯日本大会を観戦していたオーストラリア在住の50代男性がIMDを発症した事例もあった。

髄膜炎菌は地域ごとに流行する種が違い、国内の日本人における保菌者は0・4~0・8%程度だが、イギリスなどでは国民の約10%が保菌者との報告もある。国際交流イベントでアフリカ・欧州・中東などの流行国から来日する人と接触する可能性が高い場合はワクチン接種を推奨する。

髄膜炎菌ワクチンが接種できる医療機関は、ワクチンを製造しているサノフィ(株)のHPから検索できる。同社によると、今年は例年の数倍の量を備蓄している。
HP=https://www.imd-vaccine.jp/search/

 

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2020年2月17日号掲載

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