「令和元年度全国学校保健・安全研究大会」(主催=文部科学省、埼玉県教育委員会、公財・日本学校保健会ほか)が、11月21・22日に埼玉県で開催された。初日の全体会では令和元年度文部科学大臣表彰などの表彰式や埼玉大学教育学部の戸部秀之教授による記念講演「子供のインターネット利用と健康」が、2日目の課題別研究協議会では10種の課題について協議が行われた。
記念講演では、埼玉県学校保健会が学校現場からの問題提起をきっかけに児童生徒のインターネット利用実態や健康・安全への影響などを調査し、調査報告書と学校での活用事例集を作成したことを紹介した。
同県での1週間あたりのインターネット利用時間は、小学生で20時間以上、中学生で30時間以上、高校生で50時間以上に及ぶ児童生徒が各1割以上を占めた。児童生徒の4割以上がインターネット利用で「毎日の生活が楽しくなった」と答えている一方、「生活習慣の悪化」「人間関係の希薄化」「有害情報への接触」など、様々なリスクや問題を体験している児童生徒も多い。
びわこ学院大学の岩崎信子教授は、児童生徒の健康課題の最近の動向を講義した。成長曲線を描くことで、虐待・ネグレクトなどによって睡眠時の成長ホルモンの分泌が抑制され低身長になる「愛情遮断症候群」などの早期発見につながることや、ダウン症候群などの疾患別標準成長曲線があることなどを解説した。
1年生が全寮制である鹿児島県立市来農芸高等学校では、健診の受け方や方法について全生徒に具体的に説明している。
例えば採尿容器への尿の移し方を水で練習させたり、心電図検査の事前説明で皮膚感覚が敏感な生徒に洗濯ばさみで挟まれる感覚を感じさせている。他にも、会場内での待機時間中に生徒が学校歯科医の言う言葉の意味などの資料を確認できるようにしたところ、「CO」の所見があった生徒が「虫歯になりかけの歯があるので歯磨きをしっかりしなければ」と話すなど、自身の健康状態と課題に気付き目標を考える生徒が増えた。
埼玉県入間郡毛呂山町では、校務支援システムの導入以降、関係者間の情報共有の遅滞がなくなった。毎週、地域の医療系大学による感染症情報収集システムで近隣の学校感染状況が集約され、各学校にメール配信されている。他にも、埼玉県入間郡毛呂山町立川角中学校をはじめとする町内の学校では地域医療実習を行う医療系大学生を受け入れており、特別支援学級の生徒への心肺蘇生法の実技指導を行ったり、3年生へ講話を実施している。
東京都板橋区立高島第一中学校では、感染性胃腸炎流行の予防としてエチケット袋を全教室に配備したり、インフルエンザと診断された旨の保護者からの電話連絡の聞き取りもれを防ぐために「インフルエンザ連絡電話受付票」を用意。生徒総会からの要望を受け、泡石けんも導入した。
教員や生徒に事前に日時を周知せずに避難訓練を実施するなどの取組をしてきた静岡県立松崎高等学校では、現在、ほとんどの生徒が地域防災訓練に参加している。起震車による地震体験や避難所運営ゲームを用いた避難所設営体験、地域団体との炊き出し訓練のほか、昨年度からは3年生が海岸でのサバイバル遠足も実施。町役場や地域自治体との連携が深まり、学校防災システムが整いつつある。
自転車通学の生徒が98%に上る熊本県立八代工業高等学校では、交通安全に対する意識を高めるため、交通遺族講話やロールレタリングを実施。生徒自身が加害者と仮定し被害者に向けた謝罪の手紙を作成するなどの取組を行った。
教育家庭新聞 新春特別号 2020年1月1日号掲載