味覚と人間形成は深くかかわっているといわれ、学童期にいかに味覚の土台を広げられるかが大切です。「酸いも甘いも噛み分けられる、味な人」と言いますが、食育活動は味がわかる人になるためのプロセス。味がわかるということは、人の心の機微がわかる、人の心の痛みがわかる人になってほしいと考えました。
給食では味わって食べることを大切にし、その一環で「味覚の授業」を行っていました。
味覚について知ろうという目標で、ねらいは3つに絞り指導しました。
方法はまず4つの種類(砂糖、塩、酢、コーヒー粉末)の味をテイスト。食べ物は舌だけではなく、いくつかの感じる力があることを知る。
☆目でみて(色どりや形…きれい、かわいい、食べた記憶)☆鼻で匂いをかいで(肉を焼くいいにおい、ケ-キの甘いにおい)☆耳で聞いて(肉の焼ける音、パイのサクサクする音、かむ時の音-パリパリ・ポリポリ)☆手でさわって(パンのふわふわ、大福のやわらかさ)☆口に入れた時の感触(冷たい、熱い、とろけそう、まろやか)☆最後に舌で。
まずは生の味を知らせます。生活の中でお砂糖やお塩をなめたりする体験が今の子にはないようで、「しょっぱ~い」「にが~い」と、テイスト時は大騒ぎ。味わった感想をワークシートに記入した後、発表してもらいます。最後に給食室で特別に作ってもらったパウンドケーキを食べて、中に入っていた「果物当てクイズ」に挑戦して授業終了となります。
和食のだしについて学習します。かつお節・昆布・煮干し・鶏がらスープの素を生のまま食べた後、それぞれのだし汁を飲んでどのだしが使われたかを当てます。ほとんどの児童が言い当てたのには驚きました。(塩分を含む鶏がらスープは、他のだしと味の比較は不適と判断し以後は削除)
授業の評価としては、★みそ汁などには、だしが味を引き立てていることがわかったか★だしには和風・洋風があり、一つか合わせるかで使うことがわかったか★本物の味を知り食べものの味に興味や関心を持つことができたか。ワークシートの1枚目はテイスト時の観察用、2枚目は振り返りとしました。午前中に実施し、給食の汁物のだしを考え、給食時間に確認しました。
▽たくさんのだしがあることが分かりました。これからもたくさんいろんなものをたべて味な人になってみたいです。▽昔の人はおみそ汁の中にそのまま(煮干し)いれていて、カルシウムをとっていたなんて初めて知りました。▽それぞれのだしには、ちゃんとした味があるんだなと思いました。楽しかった。
大留光子=元栄養教諭、現在は順天堂大学・武蔵野専門学校講師
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年11月18日号掲載