エボラ出血熱は、学校保健安全法の第1種感染症で、最も危険な感染症の1つです。極めて重篤で到命率の高い感染症で、致死率は50~90%になります。
頭痛、発熱から嘔吐や下痢を起こし、消化管からの出血や吐血が70%の患者でみられ、特に死亡例の大部分でその症状が起こっています。患者の血液や体液にエボラウイルスが存在しており、それらに接触することで感染します。
このエボラウイルスは、自然界ではオオコウモリが保有していると推定されています。(これを理由に、カルタ絵札にもオオコウモリが描かれています)
これまでの流行は、アフリカの密林地帯を中心に風土病的に発生し、数十~数百人の感染と犠牲者で終息していました。
しかし、2014年から約2年間の西アフリカ3国(ギニア・シエラレオネ・リベリア)での流行では、都市にエボラウイルスが侵入して大流行を引き起こし、1万1000人以上が犠牲となりました。
道路が整備されて感染者が潜伏期間中(2~21日)に移動するようになり、エボラウイルスが持ち込まれたと推定されています。人口密度も高く、人の流動も激しい都市にエボラウイルスが侵入すると、大流行となり、流行が長期化します。
また、国際空港もあるので、感染者が飛行機で渡航し、エボラウイルスが大陸を越えて飛び火する可能性も出てきます。国連安全保障理事会はこの西アフリカでのエボラ出血熱の大流行を「国際の平和と安全に対する脅威」と認定する安保理決議を採択しました。
そして現在、2018年からはアフリカのコンゴ民主共和国でエボラ出血熱の大流行が続いています。2019年7月にはWHO(世界保健機関)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態宣言」を出しましたが、今も流行終息の目途が立っていません。
東京五輪やワールドカップ等、国際的なイベントが続く日本ですが、海外から多くの人が入国するということは、一方で日本にさまざまな病原体が侵入してくるリスクもあります。
国際化は素晴らしいことですが、高速大量輸送時代に生きる私たちは、コンゴでのエボラ出血熱の流行に緊急事態宣言が出ている状況下において、その情報を注視していく必要があります。
岡田晴恵(白鷗大学教育学部教授)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年11月18日号掲載