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学校施設

第63回 【教職員のメンタルヘルス】教員の「失敗する権利」認めて

2019年11月18日
連載

来年度に向け、この時期以降から休職中の教員の職場復帰に向けた準備が始まります。最近、お休みしていること自体に罪障感が薄い教員の存在が注目されています。例えば、休職中に海外旅行に出かけるケースや、様々な娯楽施設に出かけた様子をSNS上に投稿しているのを他の同僚に指摘されたりするケースもあるようです。休職中も税金で給与が支払われていることも忘れてはなりません。

■管理職との温度差

病気休暇や休職をした教員との面接を実施すると、共通する一つのセリフが聞かれます。それは、「管理職が自分の気持ちを充分に聞いてくれなかった」というくだりです。管理職としては休職する時期の話やそれにかかわる手続きの話を通じて本人との話し合いが十分になされていると思っているのですが、「当事者が納得するほどの」ところまで至っていないのが問題のようです。

そんな時に、私どものようなメンタルヘルスの専門家の出番がやってきます。いくら管理職が美辞麗句を並べても、所詮は「管理職という立場の人間から言われていること」として本人は認識してしまいます。第三者的な立場の専門家が近くにいることで、「校長の前では言えなかったのですが…」等、本音の話を聞けて、復職の際の課題克服のためのヒントが得られることもあるのです。

したがって、職場復帰の際には、出来るだけ管理職と心理の専門家が同席して、本人と一緒に職場復帰に向けた話し合いをしてほしいと思います。職場復帰の成否の鍵は、休職に至った原因となった課題が解消されているかに尽きます。

■適応できないケースも

その際に重要なことは、医学的には医師からの職場復帰の許可が下りているケースでも、学校現場に復帰(適応)できないケースがあるということです。例えば発達的な課題を抱え、職場不適応等の診断で休職に入った教員。仕事の優先順位がつけられない、書類の締め切りが守れない、約束事を忘れてしまう等、日常業務に支障をきたすほどの課題が克服されないまま職場に戻ってきてもなかなか復帰が難しいのです。

さらに、生徒に対する暴言がきっかけで子どもが不登校になったその保護者から、当該教員の職場復帰に対して強い抗議が続いている中、復職しなければならないケース、管理職を含めたその学校の職場全体に対する不信感が強く、管理職との連絡自体を拒否している教員が職場復帰をするケース等もあります。学校関係者だけでなく、第三者的な立場で客観的な判断を下せるメンタルヘルスの専門家等を間に介して、保護者や本人と連絡を取り合いながら復帰に向けた話し合いを進めるケースも増えてきています。

■自力走行できる教員を

職場復帰を果たした教員の3~4割は再度休職に入る可能性があります。代替教員の不足が深刻化する中で、欠員が発生しても、現有勢力のまま何とかやりくりしている学校が増えています。それだけに、今こそ管理職のマネジメント能力が問われています。あれもできない、これもできないと教員を追い込む管理的発想の強い校長のもと、管理職の指示をこなすだけの教員では管理職を超えるような人材は育ちません。

自ら考え、実践し、うまくいかなければ再チャレンジ。そんな姿勢の教員にとっては、「うまくいかない」=「失敗」ではなく、「うまくいかない」=「経験」になっていくのです。「経験」は再チャレンジのエネルギーになります。管理職には、自力走行ができる教員たちが失敗する(経験を積む)権利を奪わないようにしてほしいと願います。自力走行できる教員たちを応援しながら、学校経営も目指す管理職の更なる出現を期待しています。


筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、教職員メンタルサポートネットワーク協会代表、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年11月18日号掲載

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