今年も日本各地で、マダニに吸血されて感染する「日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)」という病気が発生し、死亡者が出ていることが報道されています。国内では毎年、200人以上の日本紅斑熱の患者が出ているのです。
日本紅斑熱は、一部のマダニが持つ「リケッチア・ヤポニカ」という細菌の仲間が病原体です。
マダニに噛まれた後、2~10日の潜伏期の後に38~40℃の熱が出ます。その熱は1日の間に1℃以上も上がったり下がったりします。また、米粒大から小豆大の不定形な赤い発疹が手足、手のひら、顔面から全身にかけて多数出ます。その発疹はかゆくありません。
重症化すると播種性血管内凝固症候群や多臓器不全に進行してしまうことがあります。そのため、早期の診断・治療開始が重要です。
まずは、マダニに噛まれない対策を取り、噛まれてしまった場合は速やかに皮膚科で除去・消毒してもらいます。その後、10日間は朝と晩に検温して、そのときの体調も含めて記録します。
もしも発熱などの症状が出たら、その記録を持って速やかに医療機関を受診し、マダニに噛まれたことを伝えます。
日本紅斑熱には治療薬があります。テトラサイクリン系抗菌薬、ドキシサイクリン、ミノマイシンが効きます。一般的に風邪などの発熱で使われるペニシリン系、セフェム系、アミノグリシド系薬剤は全く無効です。ですから、早期診断と適切な投薬が極めて大切です。
草原や野原に入るときは、長袖長ズボンで首にタオルを巻いて露出を減らし、防虫スプレーなどの忌避剤を利用しましょう。
マダニは長い間、人や動物の皮膚にしっかりと取りついて吸血します。無理やり引き抜くと口器の一部が皮膚に残り、化膿することもあります。まずは皮膚科を受診し、マダニを取り除いてもらうことが基本です。ワセリンでマダニを窒息させて除去する方法もあります。
日本紅斑熱の患者は、10月に最も多く発生しています。林間学校や野外活動もあり、学校でも注意すべき感染症です。秋のハイキングシーズンでは、野山に生息するマダニの感染症を思い出して注意を払い、楽しんでいただきたいと思います。
岡田晴恵(白鷗大学教育学部教授)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年10月28日号掲載