(公財)消費者教育支援センターは6月24日、「消費者教育教材資料表彰2019 表彰式」と「2019年消費者教育シンポジウム」を開催。小学生向け視聴覚教材の「埼玉イツモ防災」が内閣府特命担当大臣賞、新潟県労働金庫が発行した「考えてみようSNSやスマホとの付き合い方」が(公財)消費者教育支援センター理事長賞を受賞した。シンポジウムでは「SDGs時代の消費者教育はどうあるべきか?どう進めていくか?」をテーマに基調講演や取組報告などが行われた。講演・報告の一部を紹介する。
「消費者教育教材資料表彰2019 表彰式」で内閣府特命担当大臣賞を受賞したのは、埼玉県危機管理防災部危機管理課の小学生向け教材「埼玉イツモ防災」。防災が切り口の小学生向け視聴覚教材で、災害を特別なものとして捉えず、「いつも」の中で「モシモ」を想定し日常を振り返ることで、住居内の安全点検や日頃の買い物などを考えるきっかけを与える。
「地震でできなくなることクイズ」や「災害時の食べものをどうするクイズ」など9つのコンテンツからなり、それぞれ15分程度での実施が可能だ。
(公財)消費者教育支援センター理事長賞は新潟県労働金庫が発行した「考えてみようSNSやスマホとの付き合い方」が受賞した。中学生に身近なスマホなどを「危険だから使わせない」ではなく、「安全な使い方を教え、利用できる力を身につける」ことをねらった視聴覚教材。トラブル事例はドラマ仕立てで分かりやすくまとめられている。DVDの映像教材に合わせて指導案とワークシート、板書例があり、教員が授業等で活用しやすい工夫がある点も評価された。
欧米では1982年時点で市民教育が重要視されており、SDGsとの親和性があったが、日本では「厳しい労働環境の中でいかに自身の消費生活を守っていくか」から消費者教育が発足した。
高度経済成長を通じて「消費者の自立を支援するための消費者教育」へと変容し、2010年代では「よりよい社会づくりに向けた消費者市民を育むための消費者教育」を意識し、消費者教育推進法を制定した。公害問題から環境教育へと発展したように、日本は問題発生とともに、教育の必要性が認識されてきた。
法律の施行を通じて、行政も消費者教育に積極的になっている。
消費者教育はもともと、身近な消費を自分ごととして考えて行動につなげるアクティブ・ラーニングだった。徐々にメジャーになってきているのも近年の特長だ。新学習指導要領の中でも、重視されている。
消費者教育の当面の課題として、①教職課程などを通じた教員の消費者教育の指導力の向上、②消費者教育コーディネーターの活用、③消費者教育推進地域協議会の実効的な活用がある。
子供は生産者にはなっていないが、消費者の側面が強い。生活時間をどう配分するか、財・サービスをどこにどう使うかなど、ライフスタイルの変更は価値観がないとできないため、SDGsを絡めて価値観を形成する教育が必要となる。
消費者という視点を入れることで、社会問題に関するすべての教育が実施できる。
学区内にある商店街の街探検をする中で、子供たちは弥太郎最中本舗に興味を持った。店主の関きぬよ氏は、店が大正時代から続いていること、一人で作り続けているが後継者がいないことを子供たちに語った。子供たちは街探検を通じて何度も同店に通い、調理場の見学なども行った。放課後にも店に顔を出すようになり、買い物をする子供も現れた。「店主へのお礼に餡を作って食べてほしい」と、子供たちは餡づくりにも挑戦した。
本物と関わり五感を使う活動を繰り返し体験する、作る人の思いを知ることで、一年後の子供たちは食べ物を大切にするようになり、原材料に関心を持って買い物をするようになった。常に集団での学びを意識していたため、悩んでいる子供を置き去りにしない学級風土も醸成されたという。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年7月22日号掲載