(一財)日本気象協会と西川(株)は、睡眠と熱中症の関係性についての調査結果レポートを先ごろ公開した。同社の快眠コンサルティングサービス「ねむりの相談所」が保有する睡眠データと、対応する日の熱中症救急搬送者数(消防庁、以下=搬送者数)および気象データ(気象庁)を組み合わせて統計解析を行った結果。睡眠効率の低い夜を過ごした翌日は、熱中症の搬送者数が増えていることが判明した。
搬送者数に影響を与える可能性のある要素として、日中の暑さ指数(WGBT)、前夜の夜間平均気温のほか、中途覚醒時間、睡眠効率などの前夜の睡眠が関係する可能性があることが分かった。
搬送者数の多かった日の前夜は、中途覚醒時間が長く、睡眠効率が低い傾向が明らかとなった。
また、夜間の平均気温が高いほど、前夜の中途覚醒時間が長くなることも分かった。中途覚醒時間が2時間以上のグループでの夜間平均気温の平均値は約24度であったのに対し、10分未満のグループの平均値は約22度で、約2度の差が生じていた。
睡眠効率について、夜間の平均気温が高くなるほど睡眠効率が低くなる傾向も確認された。睡眠効率が65%未満のグループの夜間平均気温の平均値は24・5度であったが、睡眠効率が95%以上のグループでは21・5度と3度の差があった。
夜間の最低気温が25度を下回らない熱帯夜ではなくても、睡眠にとって過酷な状況であることが示された。
東北福祉大学感性福祉研究所の水野一枝特任研究員は、寝苦しさ対策のカギは体温調節にあると語る。人は睡眠時に体の深い部分の温度(深部体温)を下げないと深い眠りに入れない。深部体温を下げるためには体表面から放熱する必要があるが、周囲が高気温だと熱を逃がしにくく、深部体温が下がらないので眠りにくくなる。
良質な睡眠を確保するためには、睡眠時のエアコンの使用が最も効果的。室温が29度を超えると寝苦しくなるため、エアコンを一晩中使用するのが理想的だ。
「深部体温を下げる必要があるので、エアコンの使用に抵抗がある人は睡眠時間の前半4時間程度だけでも使用して」と水野研究員は助言する。
眠りやすくするための工夫としては、①昼間に日光を浴びておく、②夕食は就寝の3~4時間前にすませる、③就寝の1~2時間前にぬるま湯に浸かる、④就寝時には衣類を着こまない、⑤布団の中で「眠る」以外のことはしない、などが挙げられる。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年7月22日号掲載