肝臓にウイルスが感染して肝細胞が壊れたり、その機能を損なうなどして肝炎を起こすことがあります。これがウイルス性肝炎で、原因となる肝炎ウイルスには、A型、B型、C型、D型、E型があります。血液や体液などで伝播され、保育所、幼稚園、学校の教職員が特に注意すべきB型肝炎を取り上げます。
B型肝炎の原因はB型肝炎ウイルスで、感染後1~6か月後に食欲低下、全身のだるさ、皮膚や目の結膜に黄色い色素が沈着するといった黄疸などの症状を伴って発症します。感染しても症状の出ない人もいます。このような急性の症状が出るのは成人で3割、小児では1割とされ、この急性肝炎の患者のうち2%が劇症肝炎となります。
急性B型肝炎発症後、成人では9割以上の患者で肝炎は臨床的には治癒し、慢性肝炎になる人は数%です。しかしウイルスは肝臓細胞内に潜在し、他の病気の治療等で免疫を抑制する薬等を投与されることで再活発化し、肝炎を起こすこともあります。
一方、乳幼児は無症状のキャリアとなりやすく、その場合は血液中のウイルス量が高いです。
そのため、B型肝炎ウイルスに持続感染している人は、一定の低い割合ですが存在すると考えられます。
学校などの集団生活では、以下のような注意が必要です。
吐瀉物・便・鼻水・痰などの排泄物だけでなく、血液にも、さまざまな感染症の原因となる微生物がいる可能性があると想定して対応します。
具体的には、傷の手当てや鼻血の処置などは、使い捨てのビニール手袋を使用するなどして直接触れないようにします。吐瀉物と同様、血液や体液が付着したものはビニール袋に密閉して捨てましょう。血液が床に落ちたり、机に付着した場合は、ふき取った後に次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。血液の付着した衣類なども同様に消毒してから洗濯します。
また、傷口からの血液、組織間液や体液が、他者に直接触れないようにガーゼや絆創膏などで傷をおおっておき、登校・登園することも大切です。
B型肝炎ワクチンは、2016年4月1日以降に生まれた人から定期接種となっています。B型肝炎の予防はワクチン接種が第一ですので、保育園の職員や教職員も医療従事者と同様にワクチンを自主的に接種することが望まれます。
岡田晴恵(白鷗大学教育学部教授)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年7月22日号掲載