日本学術会議基礎医学委員会病原体学分科会は「我が国における微生物・病原体に関するリテラシー教育」と題し、地球環境保全や人の食生活に密接に関与する微生物教育の必要性や国民の感染症の知識が不十分な現状を踏まえ、カリキュラム等を提案した。
現行の学習指導要領では、中学校の理科教育で微生物に触れているのは、動植物と関連する項目のみ。保健体育科では、「健康な生活と疾病の予防」に病原微生物と感染症の記述がある。高等学校の保健体育では保健教育が体育に比べて軽視されるため、学習指導要領どおりに実施していない学校もある。
微生物の基礎的な記述を土台に感染症への適切な予防・対処法への理解が期待されるが、高等学校の生物基礎・生物の教科書でも、微生物の基礎的な記述は少ない。
微生物という生物群を明確に位置付けた教育カリキュラムが確立されていないため、国民が病原体の発生・感染症に対する正確な理解と冷静な判断ができずにいる。
学習指導要領理科編の内容区分B「生命・地球」の「生物と環境」に微生物・感染症の項目があるが、不十分だ。微生物に関する包括的な記述や感染症予防の基礎事項に関する記述を拡充し、ICTなどを活用しながら小学生に興味を持たせる内容にする。
現在の理科教育では、有用微生物や病原体という観点での微生物教育が存在しないため、微生物を食品・医薬品・酵素・アミノ酸などの製造に貢献する生物、疾病を引き起こす病原体という観点で記載する。空中雑菌や手に付着している雑菌、水中微生物などの鏡検や培養を通じて、環境中の微生物の存在を認識させ、実体験を通じて実証的に学ばせることが求められる。
生物基礎・生物では、系統分類・免疫・生体防御などの観点から微生物への言及があるが、索引に「微生物」が含まれる教科書は少ない。高等教育では、「感染症からいかにして身を守るか」などの実践的な課題解決能力を養う教育手法の導入を提案。
保険教育では、これまでおざなりにされる傾向にあったカリキュラムや教員などの教育構成を各地域の教育委員会の責任において、改善・実行することを提言した。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年6月24日号掲載