(一財)日本気象協会は、熱中症死亡者ゼロを目指す「熱中症ゼロへ®」プロジェクトで、今年は「学校×熱中症ゼロへ」として、生徒の予防対策に注力する。5月14日には熊谷市立奈良中学校(新井英和校長)で熱中症対策イベントを開催。5月まで実施した全国小中高等学校100校への黒球付熱中症計プレゼントキャンペーンの一環として、黒球付熱中症計寄贈式と1年生への熱中症対策授業を実施。ラグビー部でも使用体験が行われた。
黒球付熱中症寄贈式では、同会事業本部メディアコンシューマ事業部コンシューマ事業課「熱中症ゼロへ」プロジェクトリーダーの曽根美幸氏から、新井校長と1年学級委員長の松崎里沙さんへ黒球付熱中症計が贈呈された。
黒球付熱中症計は黒球温度と気温・湿度から、設置環境での熱中症の危険性を計測。5段階のLEDライトで熱中症になる危険度を表示し、警戒すべき暑さ指数に到達するとブザーで知らせる。
新井校長は「設置場所はこれから決めるが、体育祭の練習などで使う予定でいる。携帯できる小型のものも部活動で活用し、熱中症ゼロを確実に実現したい」と語った。
熱中症対策授業では、日本気象協会の久保智子気象予報士が1年生49人に、熱中症になりやすい環境などを解説した。
熊谷市は昨年、日本国内最高気温の記録を41・1度に更新。海風が都心を経由しヒートアイランド現象で温められ、埼玉県に流れ込んでくることと、上空の乾いた熱風が北や西側の山を越え、吹き降りてくるフェーン現象によって真夏日や猛暑日の日数が増えた。
今年の5月の気温は平年より高く、下旬に猛暑日を観測した。6月は気温の変動が大きいが、7月と8月はほぼ平年並みの気温になる見込みだ。
熱中症計に使用される暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)は、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目し、気温・湿度・輻射熱を取り入れた指標。特に、湿度の高さを重視している。
最高気温が28度で朝から曇り空でも、熱中症の危険性は十分にある。湿度の高い日は汗が蒸発しにくく体温が下がりにくいため、体から熱が放出されない。梅雨明けは特に熱中症になりやすいので注意が必要だ。
生徒たちには、熱中症対策をまとめたパンフレットが配布された。
放課後には、久保気象予報士がラグビー部を訪問し、部員21人に熱中症計の使い方を説明した。
部長の粕谷航太さんが熱中症計の計測値を実際に記録用紙に記入する体験も行われた。
粕谷さんは「部員の安全を第一に考えて、30分に一度の休憩を入れて活動したい」と語った。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年6月24日号掲載