結核はエジプトのミイラからもその病痕が認められるほど、人類の歴史とともにある病です。日本でも過去には国民病と呼ばれ、長く死亡原因の1位を占めていました。現在の日本でも年間約2万人弱が新規患者となり、年間2000人弱が死亡している重大な病気です。受診・診断の遅れによって学校や職場などで集団感染が発生、大きな問題となっています。
結核は結核菌の感染によって起こります。排菌している状態の患者の咳などによって飛び出した結核菌が、水分の蒸発した飛沫核となって空間を漂い、それを吸い込むことによる空気感染でうつります。結核菌に感染しても体内の免疫で封じ込められて、生涯発症しない人がほとんどです。
しかし抵抗力が低下して免疫力が弱まると、体内で潜在していた結核菌が増え始め、発病しやすい状態になります。発病すると結核菌が体の組織に侵襲していきます。肺結核が多いのですが、腎臓やリンパ節、骨など肺以外の臓器に感染が及ぶこともあります。
潜伏期間は2年以内、特に6か月以内が多いのですが、数十年も経ってから発症することもあります。咳や痰、微熱などの風邪のような症状が長く続き、寝汗をかく、食欲がない、体重が減って痩せてくるなどの症状は要注意です。医療機関を受診しましょう。
胸部レントゲン写真や血液検査などで結核と診断されると、薬での治療となります。治療により感染性がなくなれば登校が可能になり、抗結核薬の投与を受けながら登校することもできます。
その場合には、感染力がないことが医師に確認されていますので、差別や偏見が生じないように指導に留意します。また重要なことは、決められた薬をきちんと継続して服用することです。薬の服用を不規則にしたり、中断してしまったりすることは、薬の効かない耐性菌や特に多剤耐性結核が生まれる重大な背景となっています。
「結核患者に対する直接服薬確認療法(DOTS)について」の改正で、保健所長は服薬支援者にDOTSの実施を依頼できます。2015年からこの依頼先として学校が対象となっています。学校に通学している患者については、保健所長の依頼に基づいて、養護教諭等が保健所の作成した個別患者支援計画に基づく方法で服薬を見守り、保健所がその状況を確認することとなっています。
岡田晴恵(白鷗大学教育学部教授)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年3月18日号掲載