1年間の締めくくりとして、特に今回は、巡回相談の中から聞こえてきた先生方の声を、メンタル予防に反映して頂きたいという思いでお届けします。
文科省の調査によると、小学校の教頭(副校長)試験の倍率が2倍を切った自治体があるようです。受験者の倍率が2倍を切ってしまうと、どうしても「質」が問われてきます。
そんななか「えっ、あの人が教頭試験に合格したの」という声が身内から聞こえてくるようになると事態は一層深刻です。管理職が教員のメンタルヘルスに与える影響力は甚大です。
教頭(副校長)のなり手が減少している背景の一つには、朝早くから夜遅くまで働き詰めの毎日、それなのに自分に“決裁権”が与えられているわけでない。こんな激務の教頭職を見せつけられると、僅かばかりの管理職手当をもらったところで「これでは割が合いません」となる教員がいても、不思議ではありません。
全国的に40代教員の採用を控えた影響で、ミドルリーダー不足が懸念されています。
具体的には、教員の年齢構成が50代か、30代半ば以下かの2極化になりつつあります。
35歳という年齢は、採用されて10年、教員として今まさに1番脂ののってくる時期です。
学校の屋台骨を支えてきた人材を、いきなり管理職や指導主事として引き抜かれてしまっては、管理職から「やってられません」という嘆き節が聞こえてくるのも無理はありません。今後は、ミドルリーダー不足が学校現場の“喫緊の課題”になってくると思われます。各自治体の創意工夫が期待されるところです。
各大学の教員養成課程にも変化が見られます。全体の傾向として、教員志望の学生が減少しつつあるようです。大学によっては、社会の要請に応えるべく、理数系の教員養成に力を入れ始めた例も見られます。
その一方で、新採教員の職場不適応が原因による病休・休職者の増加が見逃せません。最近では、職業不適応(教員に向いていない)の教員も散見されます。
そこで、職場不適応防止の一案として、採用試験に合格した4年生を対象に、3学期の1月から3月まで、インターンシップとして学校現場に派遣する取組を実施している大学もあるようです。その間に、自分が教員として不向きだと気づいた学生は、その時点で進路を軌道修正できるようなシステムもさらに追加されていると良いのではないかと思います。
大学4年生にとって、採用試験の7月実施は現状では致命的です。現行のシステムのままでは、早く内定を勝ち取りたい優秀な学生は、一般企業に流れてしまいます。
学校現場には、採用試験にはパスしていないが、即戦力として活躍している非常勤講師の方が多数いらっしゃいます。
優秀な人材を確保するという観点からも、例えば、非常勤を5年以上経験した方については、勤務した学校の中で、3校の校長から推薦を受けた(しかも、採用する際には、自校で引き取るという条件で)教員は合格させる、というようなシステムも、検討に値する時代が来ているのではないでしょうか。
筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会理事長、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年3月18日号掲載