子供の体の成長に沿ったは、心の成長も支えてくれる。グンゼ(株)は全国の小中学校の養護教諭を対象に、実物見本と指導用資料などをセットにした「下着指導キット」を無料で提供している。これまでに全国の小中学校約1500校に導入され、保健指導や宿泊行事前の指導など、様々な場面で活用されている。
「下着指導キット」には、女子児童の成長に合わせて段階的に使用するブラジャー3種類(タンクトップ、ファーストブラ、ノンワイヤーブラ)の実物サンプルや指導用資料などが同封されている。グンゼでは使用後の養護教諭にアンケートを実施。キットの提供が開始された平成15年以来、その回答をもとに改良を重ねてきた。アンケートでは「指導時期」「対象学年」「キットの感想」「児童生徒や他教員の反応」などを調査している。
平成28年〜30年の回答結果(=表)を見てみると、指導時期については「初経指導時」が最も多い42%。次いで「保健の授業・保健学習後」16%、「宿泊行事前」14%、「個別指導」12%の順となる。
「個別指導」については、保護者から相談されるケース、健康診断時に「必要と思われる子供に個別に養護教諭から声をかけている」といった例もあった。「その他」では「運動会前」「長期休業前」といった回答もあり、「夏休み前」の理由として、「薄着の季節になり、指導の必要性を感じていた」といった声もあった。
指導の対象は小学校5、6年生の「女子のみ」が最も多く、「男女合同」「女子のみ/男子のみで、別々に実施」といった回答もあった。
指導用資料では、「なぜ肌着を着けた方が良いの?」といった基礎的な下着の必要性を導入に、成長期の体の変化を下着の観点から紹介。女子のブラジャーについては、体の成長に伴って段階的に選択することや、正しい着用方法なども丁寧に紹介している。また男子の下着についても触れており、男女共通で肌着指導情報を掲載している。児童生徒や教員、保護者に向けて、下着選びの重要性の理解促進に役立っている。
今年度初めて下着指導を行った茨城県の小学校。学級担任から養護教諭に、下着指導についての相談があったことがきっかけだったという。「5、6年生が出場する陸上大会を前に、必要性を感じたようです」(養護教諭)。
それまでジュニアブラの現物を見たことがない児童もいたため、サンプルがとても参考になったという。指導用資料も使いやすく、そのまま活用することができた。「児童にとっては、イラストなど目からの情報がわかりやすかった」。
指導後は、「恥ずかしい」「誰にどんな風に相談したらよいのかわからない」といった児童の気持ちが和らいだり、興味を持った児童が保健室を訪れるようになった。下着指導が友達と一緒に話し合ったり、養護教諭に相談したり、サンプルを改めて見て確認するきっかけになったという。
同校は1学年2学級あり人数も多く、児童の発達の段階もさまざまだ。次年度の取組として、4年生時の初経指導時、5年生、6年生でそれぞれ下着指導をすることを養護教諭は検討している。
「繰り返し指導することで、児童が『自分には必要かな?』と考える、各自にとっての的確なタイミングに情報を伝えていきたい」。
今年度、宿泊行事の前となる5月(5年生)と、10月(6年生)に、初経指導と共に下着指導を行った。離島のため、インターネット通販で下着を購入する場合も多く、店で実物を見る機会が少ないことから「下着指導キット」がとても役立ったという。
以前はイラストや写真で説明していた牧京子養護教諭は、「実物を見ることで、発達段階に適した生地の厚みの違いも分かる。ブラジャーをまだ使いたくないならタンクトップがあるよ、といったきめ細かな指導ができる」と話す。「見たことがある!」など児童の反応も大きかった。
同校の女子児童は5、6年生合計10名。指導は個別で行っており、児童それぞれに合わせて、CD―ROMでポイントを見せた。児童がパンフレットを家庭に持ち帰ることで、指導の内容や下着について保護者と確認することにつながったという。
以前は、初経指導だけを行ってきたが、牧養護教諭は「ここ数年、特に下着指導が重要と感じるようになった」。小学校中学年〜高学年には発育が早い児童もいるが、保護者の関心が薄く、適切な下着を身に着けていないケースが増えているという。小中連携の会議では、中学校でも気にしない生徒がいる、という実態が報告された。
「初経教育と同様、下着指導は思春期に差しかかった子供の心にとても重要」と牧養護教諭。この時期の子供の不安定な心をケアすることも、指導の大切な役割だという。「学校でも指導するが、恥ずかしい気持や成長に伴う不安は、学校だけでは埋められない」。個別指導後には、パンフレットと共に、『お母さんも自分の体験をお子さんに話してあげて下さい』と手紙を添えた。
それまで体育の授業の時だけブラジャーを着けていた児童もいたが、下着指導の後は全員が着用するようになった。指導が児童と家庭にしっかり伝わったことを実感している。
「下着指導キット」は、指導者が使いやすく、児童生徒が理解しやすいよう、工夫された内容となっている。
成長段階に応じた3種類のブラジャーをセット。子供が実際に手に取って触り心地や生地の厚さ、形状を確認できる。「これまで見たことがなかった」「どういったものを選んだらいいのかわからない」といった場合でも具体的に理解できる。
授業などでの使用後も返却不要のため、児童生徒への指導だけでなく、保護者会での説明や保健室での展示、担任や保護者からの相談への対応などで活用されている。
指導用資料では、導入に「なぜ肌着を着けた方が良いの?」として、体温調節の補助や清潔、汗の対策といったエチケットについて触れる。下着の大切さは男女共通だ。
続いて男女それぞれに応じた情報を提供。「女の子の下着」では、胸の成長過程を3段階で紹介するほか、バストサイズのはかり方、ブラ選びのチャートなども掲載。サニタリーショーツの種類にも触れている。
「男の子の下着」ではブリーフ・ボクサー・トランクスの特徴をまとめ、年代別の着用状況をグラフも交えて紹介している。
指導の内容は、各校の状況に合わせてアレンジすることができる。対象学年や発達段階、指導時間に応じて、活用方法もさまざま。計画的な授業をサポートする。扱う下着・肌着情報は小学校中学年から中学校まで幅広く対応する。指導用資料と同じ内容を収録したCD―ROMは、必要な場面だけを見せたり、個別指導にも使いやすい。他の教員と共有してT・Tでの活用にも便利だ。
指導のポイントとして、体の変化で心が不安定になりがちな成長期の子供たちに、まず最初に「成長することはとても嬉しいこと」「成長には個人差があるので人と比べない」ことなどを教えて欲しい、としている。
※キットの内容は、2020年6月よりリニューアルしました。
■胸の成長段階に応じた3種類のブラジャー(ピエクレール)
①タンクトップ、②ファーストブラ、③ノンワイヤーブラ
■指導用資料
④冊子、⑤CD―ROM(内容は④と同じ)
■⑥児童生徒用のリーフレット(30部)
■⑦胸囲測定用のメジャー(2個)
学校名・ご担当者名・郵便番号・学校住所・学校電話番号を明記のうえ、FAXにて(株)教育家庭新聞社までお申し込みください。
(株)教育家庭新聞社FAX 03・3864・8245
※当キットは返却不要です。授業での活用後にキット同封のアンケートにご協力下さい。
※お申込みからキット到着まで、1~2か月かかる場合があります。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2019年2月18日号掲載