ノロウイルスは12~48時間の潜伏期の後、嘔吐、下痢などの急性胃腸炎の症状を起こします。頭痛や発熱を伴うこともあります。二枚貝などを不十分な加熱で食べることで発症する場合もありますが、患者の便や吐瀉物に含まれたウイルスが手に付着して口に入ることで、人から人への感染も起こります。
学校での集団感染の報告も多く、冬をピークに1年を通じて発生します。学校で予防すべき感染症(学校感染症)では「その他」に分類されており、症状が治まり全身状態が良くなったら、登園、登校が可能です。
通常、数日で軽快しますが、脱水や吐瀉物による窒息などもあるため、注意が必要です。吐き気がある状態で横になる場合には、体を横向きに寝かせて喉に詰まらせないようにします。少しずつ水分を補給し、安静にして消化のよい食事を与えてください。脱水がひどい場合は医療機関で輸液を行うこともあります。
感染者の糞便や吐瀉物には莫大な数のノロウイルスがいますが、ほんの数十個が人の口に入ることで感染が成立します。下痢便や吐瀉物は最も感染の危険のあるものとして、塩素系漂白剤や二酸化塩素の液剤で消毒しましょう。広範囲に飛び散っているので、丁寧に拭き取り、消毒をします。残った汚物が埃や塵と共に舞い上がったり、掃除機の排気で空中に飛び出して、その中のウイルスを吸い込んで感染することもあります。
特に学校での発生時には、同時に複数の子供が嘔吐することもあり、その対応に追われますが、このときの吐瀉物の処理と消毒、トイレ周囲の清掃と消毒の徹底が校内における流行防止の鍵になります。
回復後も2週間程度はノロウイルスが便中に排泄されますので、手洗いの励行を指導します。特にトイレの後、食事の前は気をつけます。回復直後の児童がよく洗っていない手で給食のパンを配ったことで(トングを使用しませんでした)、クラスで集団感染が起こった例もあります。トイレを流した水流でウイルスが巻き上げられ、長時間漂うこともありますので、トイレの蓋を閉めて流すこともポイントです。ノロウイルスにはワクチンも直接効く薬もありませんから、感染を予防する指導が大切です。
岡田晴恵(白鷗大学教育学部教授)
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年10月15日号掲載