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第52回 【教職員のメンタルヘルス】日常で休む時間確保に努める

2018年9月17日
連載
Q1:行事の重なる季節。忙しい中でもできる日常のメンタルヘルス対策、ヒントを教えてください。

忙しい時期こそ「意図的・計画的・具体的」に、心と体を休ませる時間を組織として設定することが必要です。例えば、体育祭予行日反省会後に“反省会の反省会”として30~40分程度の簡単な懇親の場を設定し、体育祭当日に向けての意欲向上、職員のコミュニケーションを深める場を設定します。終了後は、勤務超過分の割り振り変更等をして一斉に退勤させます。管理職が工夫すればすぐ実践できる対策の一例です。

またテスト前等の部活動中止期間には、勤務時間の割り振り変更をして早めに退勤できる日を設定します。これは一斉に行うこと。個人対応にすると遠慮して退勤しない状況が生じます。忙しい時期こそ、心と体を休ませる時間を確保し実践することが大切です。

Q2:秋以降、年度末にかけて起こる教員のメンタルヘルス不調の特徴とは。

学級担任の場合、秋以降、児童生徒が「他学級との違い」や「学校行事に取り組む姿勢」等について、他の教員と比較する機会や場面が多くなります。そして、その優劣を直接、間接に担任に伝えるようになります。加えて、保護者からも同様の指摘をされると、自信が揺らぎ良い評価を得ようと無理をし、働く時間が超過し、メンタルに不調をきたします。専科教員等の場合、同僚にも相談できず一人で抱え込んでしまうケースがあります。

学級担任は「学級経営」と「保護者対応」。専科教員は「教科指導」が代表的な不調の原因です。当然ですが「生徒指導」は年間を通して“メンタル不調の最大要因”であることを忘れてはなりません。

Q3:どのようなタイプの教員がストレスを抱えやすいでしょうか(個人の性格や立場をふまえて)。

ストレスを抱えやすい教員=メンタルに不調をきたし易い教員と考えておく必要があります。では、どの様な事がストレスになるのでしょうか。職場における立場から考えると、(1)新採用者=理想と現実のギャップ、荒れた学校への着任、新しい土地への着任等(2)他市町村異動者=教育文化の違い、児童生徒を取り巻く環境の違い、知人のいない職場環境等(3)新任管理職=新しい土地での新しい職責、教職員との人間関係の不安等。

個人の特性から考えると(1)発達特性=発達しょうがいの診断を受け職務に不安を感じている場合、診断はされていないが自身の特性からコミュニケーションに不安を感じている場合等(2)既往歴=以前に病気休暇・休職の経験がある場合、就職以前にメンタル系疾患にり患している場合等(3)家庭環境等=親族の死・婚姻・転居・住居の新築等、人生の大きな節目の場合等が考えられます。

管理職が教職員の公私全てを把握するのは不可能なので、職場環境がストレッサーとならない配慮と、ストレスを抱えやすい状況か否かを見極める目と心を持つことが大切です。

Q4:学校長同士の交流で得た気づきがあれば教えてください。

管理職が十人いれば十通りの学校経営があり、能力・個性・職歴も十通りです。A校で成果をあげた方法がすべての学校で通用するとは限りません。しかし対策に取り組まなければ、毎年構成メンバーが変化する学校では、職場環境が改善するより悪化するリスクの方が大きくなります。

校長はすべての最終責任者です。メンタルヘルス対策を最優先で取り組まなければならない学校ばかりではありません。メンタルヘルス対策の交流では、話の焦点を絞り、メンタルの課題を抱えた教職員を批判する姿勢や、自分には関係ないとの無関心な姿勢に陥らない配慮をしつつ交流することが大切です。


筆者=多田出正(ただいで まさし)日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会常任理事、公立中学校スクールサポーター、順天堂大学国際教養学部非常勤講師、元公立小・中学校長

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年9月17日号掲載

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