冷凍めんは、うどん、パスタ、そばなどラインナップが幅広く、昨年度の国内の冷凍めんの生産数は17億9368万食あまり。1人年間14食を食べている計算だ。その原材料となる小麦や蕎麦は、日々新しい品種が開発されている。(一社)日本冷凍めん協会では、事業者向けに「国内麦・国内そばの実態研修」を実施。訪れた九州では、消費者ニーズと地域の食文化を捉えた品種の開発が、地道な研究のうえに行われていた。
博多はうどんと蕎麦の発祥の地と言われる。僧侶が中国から製粉技術を持ち帰り広めたと伝えられ、博多駅前の「承天寺(じょうてんじ)」には石碑もある。
九州は北海道と並び、国内小麦の2大産地の1つ。本州よりも気温が高く、比較的短い期間で収穫することができる。その気候を利用し、米や麦などの2毛作を行っている農家も多い。
福岡県・筑後市にある「農研機構九州沖縄農業研究センター」(筑後研究拠点)では、様々な農作物の研究開発を行っている。
麦の開発は、異なる品種を育て、1つ1つ手作業で交配、検品、成分を調べて種を選び、さらに次シーズン育てて交配する、といった作業を繰り返しながら行われる。1つの品種を改良・開発するには15年ほどかかり、そのため1人の研究者が在職中に関われる品種の数はそう多くはない。
開発された小麦は、台風や病気に強い丈夫な品種、パンに使用するグルテンの多いものなど、様々な品種がある。九州地域の食生活に合わせた「ラー麦」(福岡のラーメン用に開発した麦)が生産されているほか、ちゃんぽん用に成分を調整したものも開発中。「地元の特産品として生産したい」という開発者の思いも反映されている。
また大麦はポリフェノールなどの成分のため赤く変色しやすいが、使いやすい白い大麦を開発中だ。大麦はグルテンフリーなので、小麦アレルギーのある子供も食べられるケースがあり、開発と活用が期待されている。
熊本県にある合志(こうし)研究拠点は、同九州沖縄農業研究センターの本拠地であり、蕎麦や畜産なども含めた幅広い開発を行っている。
蕎麦は雨に弱いが、九州は台風の通り道。そこで台風シーズン前の5月下旬~6月上旬頃に収穫できるように栽培している。
麦が自花受粉(同じ花で受粉ができる)なのに対し、蕎麦は他花受粉(同種でも他の花で受粉する)なので、受粉作業の手間もかかる。そのため1品種を開発するのにも小麦以上に時間が必要で、20年ほどかかることもあるという。さまざまな厳しい条件のもと、アレルゲンが少ない蕎麦などが開発されている。
現在国内で消費されている蕎麦の7割が輸入に頼る中、九州は今後の国内蕎麦の産地としても注目されている。
提供:農研機構九州沖縄農業研究センター
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年7月23日号掲載