静岡県の袋井市立中部学校給食センターでは、熱中症対策として施設の整備や調理員への啓発に力を入れている。調理業務を請け負う委託業者と連携しながら、平成25年の設立当初から行ってきた取組を紹介する。
同センターでは、1日あたり約6000食(2本献立)を提供している。センター内は全てオール電化厨房。調理室内の温度は1年を通して25℃以下、湿度は80%以下を保つよう設定されている。調理室内で最も高温になりやすいのは、輻射熱や蒸気を発する回転釜やフライヤーの周辺だ。実際に旧センターではフライヤー周辺温度が40℃にも達することもあった。そのため、全館空調設備を整備。輻射熱を発しない電気式回転釜を採用するだけでなく、釜の真上に設置した換気扇が蒸気を効率良く吸えるように、釜のフードカバー脇からエアカーテンを作り、蒸気と一緒に熱が室内に放出されないように工夫している。その効果もあり、調理員の作業環境は格段によい。室内の温度の一定化は、調理員の熱中症予防だけでなく、食中毒発生の防止にもつながっている。
調理後、汚れた床面がある時は、微酸性電解水を含んだモップで清掃した後、エアコンで1時間乾燥させる。床面からの水分の蒸発による湿度上昇を防ぐためだ。調理室内は全てドライ運用だが、野菜を釜へ投入する際などは床面に水分を落とさないように細心の注意が払われており、濡れた場合は放置せず、調理中にもこまめに水分をふき取る作業が徹底されている。ドライ運用は衛生面に加え、作業環境の向上も促す。
同センターは、調理委託されており、派遣された調理員約70名が勤務している。年2回は熱中症啓発を兼ねた研修を実施。休憩中の水分補給の大切さなどを伝えている。特に気温が上昇する6月からこまめに水分を摂るように促し、調理室入口2か所に麦茶を設置。特に午後の洗浄作業の際は業務責任者が巡回し、水分補給を促している。
ドライ運用の徹底や空調機器の整備による電力量の増大は、センターにとって大きな課題だ。そのため、同センター内ではデマンドコントロールシステムを採用。野菜の洗浄や加熱調理などの工程ごとに調理室が分かれており、作業毎に空調や電気の入切をすることで、一度に電力が上がらないよう調整。各部屋の電力量・室温・湿度などは、事務室のモニターで管理。作業を行っていない部屋の空調使用を抑えるため、各部屋の使用時間もあらかじめチェックしている。
モニターは830kWを超えると警報が鳴る仕組みだ。これらの管理により、1200kWで契約していた従来の約30%の電力削減に成功。月間100万円以上の電気料金が削減された。調理員へも定期的に節電についての研修を行っている。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年6月18日号掲載