やるべきことは(1)年度当初に計画した全教職員の勤務状況把握が適切に実施されたか確認する。(2)勤務状況把握から、年度当初に比べ明らかに様子が変化している教職員をリストアップする。(3)リストアップした教職員との個別面談を、夏季休業前に計画・実施する。(4)学期末提出書類(動静届、会計簿、通知表指導所見、学年・学級・教科だより等)が適切に処理されているか見届ける。
以上4点は欠かせません。特に(4)はメンタルの変調を見極めるうえで効果があり、認印を押すだけでなく内容をきちんと精査することが大切です。
夏季休業中の教職員の動静は、部活動予定も含め、一覧表等にまとめ把握します。管理職は、(1)部活動日程が過多になっていないか。(2)必要な休暇が取得できているか。(3)引率する部活動が必要以上に予定されていないか。以上3点は最低限、確認しましょう。
その上で、校長・教頭・主幹教諭等いずれかの管理職が在校している体制を整備します。それにより予定時間以上の部活動を把握でき、突発的なトラブルにも対応できます。特に経験の浅い教職員には、相談できる管理職が在校していることは心強く、メンタルヘルス予防に欠かせません。
日頃から「先生の代わりはいるが○○さんの代わりはいない」と伝え、相談しやすい環境を整えておく。その上で(1)悩んだ上での結論と考えられるので、気持ちは最大限尊重する。(2)短兵急に結論を導かず、今一度客観的な視点で相談できる家族や親族、先輩や同僚との時間を確保し時間的猶予を提供する。(3)結果として休職・退職に至った場合を想定し、校務分掌の再編を検討し準備する。(4)本人が冷静な判断ができない状況なら、専門家等との対応を勧める。
“常に最悪を想定し、最悪にならない準備をする”ことが大切です。
最近では、新学期開始前の2~3日程度、全教職員出勤日を設定している学校が多くあります。初日に、年度当初のような様々な「ソーシャルスキルトレーニング」を実施し、各自が過ごした休業中の出来事等を交流し合いながら、長期休業中に広がった可能性がある教職員同士の“心の距離”を縮める取組をすることが効果的です。
また長期休業中に、メンタルリスクの高い出来事(親しい人の死、転居、別れ等)を経験した教職員には、新学期開始前に管理職が面談を実施し、ケースによっては、メンタルヘルス専門のカウンセラーや医療関係者等と、面談する場を設定することも必要です。
些細な心や体の変化は、誰にでもあることです。それらの変化を、全教職員に同じ尺度で当てはめて考えるのではなく、一人ひとりにあった物差しで考え、対応することが重要です。メンタルリスクの高い、初任者、年度当初異動者、産休・育休明け教職員、発達の課題を抱えていると考えられる教職員等については、少しの変化でも、その情報を教育委員会担当者に伝えておくことが必要です。
さらには行政単位でメンタルヘルスの専門家(カウンセラー、相談員等)を配置している場合は、躊躇せずに連絡・相談をすることです。また、産業医との連携は、予防に重点を置いたメンタルヘルス対策では特に大切なことです。
筆者=多田出正(ただいで まさし)日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会常任理事、埼玉県公立中学校スクールサポーター、元公立小・中学校長、元市教委生徒指導担当指導主事、元県立総合教育センター主任指導主事
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年6月18日号掲載