(公社)日本臨床矯正歯科医会会長の稲毛滋自氏は、健康な歯並びと咬み合わせの視点から「矯正歯科治療は食育の役割も担っている」と考えている。前歯での捕捉・咬断、奥歯での粉砕・臼磨、食物の嚥下まで、口腔の機能は食事に大きく関わる。「よく噛む」という行為は単に食物を体内に取り入れるだけでなく、肥満の予防や味覚の発達、美しい発音の促進、脳細胞の活発化など全身の活性化にもつながっている。しかし、不正咬合の場合、口腔機能に障害が多い。歯科矯正を目的に来院する親子の多くが、繊維質・固めの食物を嫌がる、前歯で噛めない、飲み込むまで時間がかかる、など食事に関する問題を抱えている。「歯科矯正で食べる機能の問題を解決できる」と稲毛氏。食事の際などに歯並び・咬み合わせのセルフチェック(下図参照)を行い、多く該当する場合は矯正歯科の専門医に相談することを勧めた。
同会が行った「養護教諭と歯科医師に対する『不正咬合に関する』アンケート調査」では、「保護者から不正咬合について相談を受けた」という回答が全体の7割以上。専門的な知識を持つ学校歯科医の講話を希望する養護教諭の声も多数聞かれている。これを受け、日本矯正歯会医会では会員の矯正歯科医師による講話を各地で開始。希望する地域・団体の研修会などに無料で講師派遣を行っている。問合せTEL03・3947・8891
歯並びと咬み合わせのセルフチェック
□咬んだ時、一番前に飛び出している上の前歯が下の前歯より5ミリ以上前に出ている |
□咬んだ時、上の前歯が下の前歯の内側に入っている |
□奥歯で咬んだ時、上と下の前歯の間に隙間が空いて舌が見える |
□あごの先がどちらかに偏って、顔の左右が非対称である |
□歯並びがでこぼこしている(八重歯が内側に倒れ込んだ歯など) |
□左右で、あるいは上下で永久歯の数に違いがある |
□歯が抜けたままになっている |
□麺類を前歯で咬み切れない |
□サイコロ状の肉を食べるとき左右の奥歯で同じように咬めない |
□上手に発音できない音がある |
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年4月23日号掲載