本連載は様々な視点で教職員のメンタルヘルス対策を伝えてきたが、今年度はポイントを絞り1問1答で紹介する。
新採教員には、原則として1年間、初任者指導教諭が張り付き、学校全般の仕事について様々な「指導」を行います。新採教員からすると、自分の親父やおふくろと同じ年齢の人たちなので、世代間ギャップを感じたり、こんな初歩的な質問をしたら笑われるのではないかと遠慮してしまうことがあります。
そんなときに、自分たちと年齢も近く、ついこの間まで初任者であった先輩教員を「メンター(世話人)」として任命します。「5月の連休までが一番きついのよね」などと、自分の気持ちにメンターから共感してもらえることで、メンタル的に「ほっと一息」つけるようです。
3年目以降の教員をメンターに任命して、任せっぱなしにしていてはメンター自身の不安が募るし、メンター自身の成長も期待できません。そこでメンターに対しても次の2つのフォローが大切になります。
1つ目は、メンターを配置した学校の管理職が、ペアリングはうまくいっているか、具体的にどのような支援を行っているか等メンターの現状把握をすること。2つ目は、教育委員会が定期的にメンターを集めて指導助言を実施し、メンター同士の悩みを解消して現場に戻すことです。
メンター・メンティーの組み合わせを決める際には、原則として管理職や学年主任が、新年度が始まってから1~2週間、教員の動きを観察してペアリングを決めていきます。その際の留意点は、出来るだけ同性同士で組むこと。何年か非常勤講師を経験して専任になった新採教員に対しては、それ相応の教職経験がある教員をつけること。しかし、実際に組んだところで相性が悪いことが分かることも考えられます。
ペアリングを解消する際に管理職が「2人の相性が悪いから」と当事者の教員同士が傷つくような言い方は極力避けるべきで、あくまでも「管理職の都合で」ペアリングを変更すると伝えてください。
保護者の方が教員よりも年上の場合には、なおさらですが、原則として新採教員に一人では対応させないことです。管理職や学年主任が同席して、新採教員が困ったときには助け舟を出してあげましょう。
また、電話応対の際にも、そばに学年主任や教頭にいてもらい、返事に困ったときには指示を仰ぐ体制をとった上で電話応対をすることが必要です。
保護者とのトラブルの大きな原因の一つに、「初期対応のまずさ」が考えられます。まず、いきなり本題を切り出すのではなく、「日頃の学級活動にご理解ご協力を頂きありがとうございます」の挨拶ぐらい言えるようにすることが大切です。
よくありがちな事例に、学校不信の保護者ほど「やり場のない怒り」を教員にぶつけてくるパターンが考えられます。自分の教師としての力量とは関係ないということ、落ち込む必要はないことを指導しましょう。
筆者=土井一博(どい・かずひろ)順天堂大学国際教養学部教職課程客員教授、日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会理事長、埼玉県川口市教育委員会教職員メンタルヘルスチーフカウンセラー
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年4月23日号掲載