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第46回 【教職員のメンタルヘルス】養護教諭のための環境づくり

2018年2月19日
連載

専門職連携で相互理解を深め「チームとしての学校」に期待

<ストレス対処力の要素>
首尾一貫感覚(SOC)
把握可能感
予測可能である感覚
処理可能感
やればできると思う感覚
有意味感
何らかの意味を見いだせる感覚

医療社会学者アントノフスキーが提唱した「人はなぜ健康でいられるか」という視点で捉える「健康生成論」(1)について説明します。「健康生成論」の最も中心的な考え方は「首尾一貫感覚(SOC)」です。SOCは「把握可能感」「処理可能感」「有意味感」の3要素で構成されています。
「把握可能感」は予測可能である感覚、「処理可能感」はやればできると思う感覚、「有意味感」は何らかの意味を見いだせる感覚。これらの感覚が高い人は、大きなストレスを感じる場合でも適切なストレス対処により、心身の健康を害さずに過ごすことができると言われています。
この感覚は急に高まるものではなく、人生経験を通じて形成される感覚とされています。一貫性のあるバランスのとれた適度なストレス、責任をもって決定をする経験などの良質な人生経験が、SOCの形成を促進するとのことです。

■専門性発揮するために

子供たちを取り巻く健康課題の急激な変化に伴い、中核的役割を期待される養護教諭はその現状にいち早く気づき、ニーズに合った養護判断、実践力が求められます。養護教諭が学校組織の中でストレスに対処し専門性を発揮できるため、以下を提案します。
1つ目として、前述したSOCの3つの感覚を持ちながら日々の教育活動に向きあうこと。2つ目は、先が見通せて、やればできると思え、やっていることに意味があると思える実践と、自分自身の職務のゴールを「シミュレーションができること」が有効です。
「養護教諭の職務に関するシミュレーション」の実践には、学校組織の個人として、チームの一員として、学校現場で起こりうる場面(ここでは保健室での場面)を想定し、模擬的な状況の中、経験を踏まえてイメージしながら取り組んでみることです。特に最善の養護実践を行うために、備えるべき専門的知識・技術・態度をともに学習している他の参加者とディスカッションを中心に、関連資料を活用したり、指導者からの助言を参考にしたりしながら、専門職としての力量を高めます。

■専門性の尊重と協働

その欠かせない視点として学校内外の子供たちに関わる専門職による「チーム」で進めること、すなわち、専門職連携(IPW)を意識することが大切です。多様な校内外の専門職が互いの専門領域の手法を尊重しつつ連携し協働することで、自らの専門領域がもつ可能性と限界を明らかにすることができます。また相互に補完し合いながら提供できるサービスが向上し、その質を高めていくことが可能になること(2)との報告がなされています。
平成27(2015)年の中央教育審議会答申では「チームとしての学校の実現」が求められています。「養護教諭を取り巻く専門職連携」により、互いの専門性を理解し、チーム形成の基礎である信頼関係を結び、メンバー間の相互作用を促進させることができます。そこには、チームワークを高めるために同じ土俵で課題に真摯に向き合うことが必要です。
このようにチームを組んで仕事をすることで、養護教諭の専門性の理解につながり、,専門領域の可能性と限界が明らかになることが期待できます。そして、見えづらいとされる養護教諭の職務内容が少しずつ共有され、チームに理解されていく学校組織の変化に期待を膨らませます。

【引用文献】
(1)『ストレス対処能力SOC』=山崎喜比古、坂野純子、戸ケ里泰典(有信堂高文、2008)/
(2)『看護のためのシミュレーション教育 はじめの一歩ワークブック(第2版)』=阿部幸恵(日本看護協会出版会、2016)


筆者=上原美子(うえはら・よしこ)公立の小中高で養護教諭、埼玉県教育委員会指導主事を経験。現在は埼玉県立大学保健医療福祉学部共通教育科准教授、日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会事務局長

教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年2月19日号掲載

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