この時期は梅雨から酷暑、残暑と心身の疲労感が溜まりやすい、「心の夏バテ時期」です。心地よい体の疲労感は心に良い刺激を与えますが、不快な疲労感(ストレス)の蓄積は心身を害します。夏休み前は「もう一息で夏休み」という踏ん張りがきく時期ですが、8月の終わり(夏休みの終わり)から学校のスタート時期は、急性的なストレス過多状態になりやすい時期です(世の中では自死の要注意時期でもあります)。
特に「活気」「やりがい」「ポジティブな見通し」等が低迷している教員は、ストレスや不安を強く感じがち。この時期の現象を「サザエさん症候群」に関連させて筆者は「24時間テレビ症候群」と名付けています。
職員室の物理的な環境づくり「癒しの場」は大切です。例えば、気楽に集える場所、柔らかい椅子、花や観葉植物・水槽などの癒しのある職員室はストレスの解消に有効です。
また夜遅くまで夕食も摂らずに黙々と職員室で仕事をしている教員のサポートも必要です(多くは机上に書類が積みあがっています)。このタイプの教員は、この時期に負のスパイラル〈食生活と生活時間の乱れ→睡眠不足→自律神経の乱れ→体調不良→慢性疲労→鬱状態・適応障害等〉に陥りやすいため、次の様なサポートが考えられます。
対策例①:学校全体が最長で20:30(冬季は20:00)までに職員室(学校)を退出するルールをつくる(勤務時間の構造化)。
対策例②:責任感が強く多くの仕事を抱え込んでいる教員に対しては、仕事の振り分けをサポートする(実質的仕事量の緩和)。
Q2で述べたように、規則的な生活のリズムが崩れると心のリズムも崩れます。中でも一番大切なのは睡眠時間の確保です。寝不足が重なると鬱になるリスクが高まります。ストレスをため込まない考え方の一つに「ポジティブ・リフレーミング」があります。
例えば「クラスの3分の1の子供と上手くいっていない(ネガティブ思考)」と考えるのを、「クラスの3分の2の子供と上手くいっている(ポジティブ思考)」と発想転換をしましょう。
「褒めあい・認め合える」職場環境づくり=まずは管理職が教職員を褒め認める⇒学年の職員間で褒め認め合う⇒教職員全体で褒め認め合う。このような職場環境(習慣)づくりを推進しましょう。
「助け上手・助けられ上手」になる=愚痴を吐ける3つの間「時間・空間・仲間」づくりを推進しましょう。「助け上手・助けられ上手」というチームケアの輪がここから広がります。
「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」が重要です。この時期は1学期に溜まっていた心身の疲れが一気に出がち。規則正しい生活を送ることが大切です(この頃に不眠や過眠が続く場合は要注意)。
夏休みは気分転換を行うのには絶好の期間です。充実した自分の時間や趣味を待つことは定年後の課題でもあります。非日常の体験として趣味や自己啓発等に興じることは、心身に溜まった慢性疲労を緩和する何よりの特効薬。また比較的時間に余裕がある夏休みに教職員レクや親睦会を開くこともお勧めです。
夏休みに「ワーク・ライフ・バランス」を整え、休み明けに生活と仕事の豊かな「相乗効果」を得ることができれば、セルフケアは良好と言えるでしょう。
筆者=鈴木隆広(すずき たかひろ)臨床心理士・神奈川県教育委員会スクールカウンセラーアドバイザー・教育相談スーパーバイザー等
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2018年7月23日号掲載