毎年、支援が必要な子供に関わる担任、保護者、子供本人は「来年度はどこに在籍し、どのように学ぶことが一番よいのか」…進路を見据えつつ方向性を出さな ければいけないのがこの時期です。義務教育終了後の進路選択は特に、その後の人生を大きく左右します。
今回は、発達に困難を抱える子供を持つ保護者との関わりを考えます。
発達の凸凹により、学校 生活で困難を抱える子供た ちは、教員の実感としては クラスの 10 %以上に上ると言われています。児童生徒 数は減少していますが、特別支援学級や特別支援学校に在籍する児童生徒数は逆 に増加しているのです。
教員の誰もが、特別支援教育の視点からその子供た ち一人ひとりの様々な困難を理解し、保護者と信頼関係を築き、指導や支援を考えなければなりません。
日頃の信頼があってはじめて、発達の凸凹や障害が予見される事実を保護者と共有することが可能です。 しかし理解を得るには配慮が必要です。保護者、家族、 地域、本人の状況をアセスメントし、専門家チーム等の関係機関と連携していく必要もあるでしょう。
そしてもし理解を得られたとしても、保護者が子供の障害を受容するまでには、長期にわたる支援が必要であることを認識しておかなければなりません。受 容し、前向きに子供の将来 を共に語れるようになっても、悩みや苦しみはなくなりません。子供の成長の節目やふとしたことで何度も傷つき、不安になります。
教員は責任感から、早く解決しようとするあまり、 保護者の日々の変化に感情的に巻き込まれ、誤解する こともあります。これを防ぐには、長いスパンで捉え「今できることを行い、支 援を繋ぐのが自分の役割」と考えることも必要です。 教員の精神的な安定が、より良い指導や支援に繋がるのです。
保護者にはそれぞれの事情があり、保護者なりの理解や行動に踏み切るタイミ ングがあります。保護者の「その時」が、その事例の 「その時」です。いろいろ な方の連携で諦めず、保護 者の「その時」へバトンを繋ぎたいと思います。
保護者の困難な状況は子供の生活に直結します。精神疾患や知的障害、発達の凸凹を抱える保護者の方々、DVや虐待の渦中という家庭もあります。保護者との連携で一番大切なことは「子供を守るための大切 なパートナー」として接することです。【下の表参照】
【困難を抱えた保護者との関わり方】 | ||||||||||
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小学校1年生から、特別支援学級での支援が必要だとされていた彼は、通常級 でもう中学3年生。小学校でならきっと短期間で身に ついただろうことは数々あ りますが、ようやく「その 時」はやってきました。
様々なことを経て、家族と本人の判断から特別支援学校の高等部に進学することに。支援者の方々の努力が1本の道に結実したのでしょう。たとえうまくいか なかった支援でも、意味があったと思います。子供たちは時間をかけ、たくましく成長していきます。
執筆=神保るり=日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会理事(協会認定カウンセラー)、教育支援室選任教諭(教育相談地域コーディネーター)、特別支援学校教諭を経て、現在は公立中学校教諭
【2016年11月21日号】