東京都世田谷区の閑静な住宅街に囲まれた世田谷区立砧小学校(臼井潤一校長)を訪問した。今年で赴任7年目の徳永千夏養護教諭は「保健室は児童が長く居るべき場所ではない」と語る。
自身との関係性が強くなりすぎて、児童が主体的に行動しにくくなることを危惧しているためだ。
「最終的に児童が帰る場所は教室。担任や他の児童との関わりを多くもつことが一番。児童を小鳥とするならば、保健室はとまり木のような場所でありたい」という。
担任と保護者、児童の円滑な関係づくりをサポートし、学級運営のフォローに努めていきたい。そんな思いのこもった言葉である。
学校生活の中における児童の問題について、その場にいない保護者が正確に状況を把握することは難しい。特に児童同士のけんか時の対応などで担任とのトラブルが起こりやすい。
児童を通じて保護者に間違った情報などが伝わると、トラブルはさらに大きくなってしまう。そうした場合、担任から保護者への迅速な連絡が不可欠だが、他の業務で忙しく、連絡が疎かになることもある。
「些細な行き違いなどが原因で苦労している担任の姿を見て、何とかサポートしたいと思った」と話す。
児童の性格などを考慮して、児童が帰宅する前に担任が保護者に連絡するなど、保護者への連絡のタイミングや、その際の適切な伝え方などを担任教諭に助言する。
余分なトラブルをなくし、担任が児童との関係づくりに集中できるよう、全体を見渡しながらフォローするよう心がけている。
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しかし中には、担任やクラスが変わるといった環境の変化に対応することが苦手で、なかなか教室に入れず、保健室登校をしている児童もいる。
そういう場合は、逆に「絶対に教室に戻さなければならないという気持ちでいると担任も保護者も辛くなってしまう」と考え、忙しい担任をフォローする形で、毎日授業が終わった後、保護者に1日の様子を伝えて長い目で見守るよう両者に声をかけている。
そうしているうちに、学年発表などに参加できるようになるなど、児童に少しずつ成長がみられるようになったという。
「出来ないことばかりに目を向けず、長い目で見ていたからこそ小さな成長に気付くことができ、担任や保護者と共に喜ぶことができた」と語る。
【2016年9月19日号】