これまで27回に渡り、日本教職員メンタルヘルスカウンセラー協会の協力を受け、「教職員のメンタルヘルス―心の悲鳴に耳を傾ける」を連載してきました。同協会の土井一博理事長は、埼玉県川口市の教職員専門のメンタルヘルスカウンセラーとして、実績を挙げています。他のメンバーもそれぞれの立場で教職員や児童生徒のカウンセリング等に携わっています。
その実績を基に、2013年5月に協会が創設されました。教育委員会による初任者研修やミドルリーダー、校長への研修から、校内研修まで講演を行い、特に休職者をいかに出さないようにするかの「予防対策」に力を入れています。
28回目からの連載は、「管理職のマネジメント」「セルフケア」「職場の環境づくり」を中心に、これまで概念をお伝えしてきた内容をより具体化し、今日からでも取り入れられる情報をお伝えしていきます。
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「毎朝、学校に出勤して1時間目が始まるまでに何をすれば良いのでしょうか」。今年度、新たに小学校で担任を務めることになったA先生が真っ先に頭に浮かんだことだという。
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大学では指導案の書き方や教材研究の方法は教わるが、日常的な教員としての細かい仕事の中身については教わっていないのが現状だ。
医療現場に増えている
プリセプター制度
医療現場では、1年目の看護師に対して3年目から5年目までの先輩がマンツーマンで1年間公私に渡り面倒をみる「プリセプター制度」というシステムで効果をあげている。
医療機器の使い方や刺の方法、ベットメーキングに至るまで、先輩が一つ一つできているかを確認しながら確実に覚えていく。そのようにして、1年目看護師の職場不適応や医療事故を防止しているという。
具体的なスキルや知識を
一覧にして明確に提示
一方、教育界の現状はどうだろうか。新採教員に対しては、年配の初任者指導教員の配置や自治体レベルでの初任者研修が1年間余りかけて実施されている。そのようなマクロレベルの研修を土台に、日々の学校生活の中で実際に必要とされる具体的な知識やスキルの伝達が必要だと感じたことはないだろうか。
上記の一覧は、それらをまとめた(小学校用)。内容は担任(教員)として必要な要素はもちろん、社会人としての常識も盛り込まれている。ここまでする必要があるのかという意見もあると思うが、この一覧は新採教員を何度も指導してきた教頭や現職教員によって項目を作成(拡大写真はコチラへ)。
GW頃になると、新採教員の職場不適応者が一気に発生する。特に今春、大学を卒業して臨任教員として学級担任を受け持つことになった教員や、地方から初めて親元を離れ、一人住まいを始めた教員たちはサポート資源が乏しいという意味では、要注意だ。
教育委員会や管理職は新採教員に対して〝人を配置したこと〟で安心せずに、もう一歩踏み込んで細かなおもてなしを考えて欲しい。
【2016年4月25日号】