「七草」の行事食 (七草がゆ、鮭の塩焼き、炒りどり、お浸し) |
平成25年12月に、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。これを喜ぶと同時に、現代の日本人がどのくらい「和食のしきたり(作法)」を理解しているのかと疑問になりました。私がこれまで取り組んできた「和食のしきたり」も、この疑問が原点です。給食時間を使った「洋食のマナー」の指導は、一部の学校でかなり前から行われてきました。和食よりも洋食のマナーが実践されてきたのは、和食の基本は家庭で日常的にしつけられるものとの認識があったからです。
しかし、「はし」を正しく持てない児童・生徒の増加、大人の食事マナーなども気になり、私自身も和食のしきたりや作法を知らないことが多いと実感し、この授業を始めました。
最近テレビを見ていると、ご飯と汁物の置き方が逆というのをよく目にします。一般的にはご飯は左、汁が右、おかずのお皿は主菜を皿の奥に、添える付け合せ(副菜)は、前盛りにするのが和食です。洋食はこの反対です。
指導例は、(1)各学級に配膳盆を模したマグネット板を配布し、主食・おかず・牛乳・デザートの食器カードを、その日の献立に応じて担任や係が貼付(2)「きょうの配膳」プリントを配る(3)献立表等配膳図を記載する、の順です。
食器も家庭科室や給食食器メーカーから借りて本格的に指導を行うことを推奨 |
はし使いを含めて、学校が指導する責任はないとの声も多く聞かれますが、やはり現状をみると、正しく美しくを使える人になってほしいと思います。方法として次の事例を挙げます。
(1)入学説明会などで「はしの正しい持ち方」のプリントを配布し、保護者にチェックを呼びかける(小学校)(2)生活科や学級活動で、ビデオ教材を使い練習する(小学校)(3)文化祭や委員会活動の一環として、豆つかみ集会などを実施し、の持ち方・使い方を啓発する(小・中学校)。
給食時間を活用して約8年実践した和食のお作法教室では、小学校高学年「米作り」やお魚マイスターとの連携を試みたこともあります。1クラスごとに、ランチルームや図書室で実施しました。お魚マイスターには、尾頭付き魚の食べ方を指導した後、給食時に巡回してもらいました。
洋食マナー指導は給食とは別にフルコースを用意しましたが、和食の場合は通常の給食に1・2品追加するだけで良いので、調理室の負担も少なく実施しやすいです。その際、家庭科室の食器などを活用して、置き・飯椀・蓋付汁椀・角皿・小鉢等をえ、実施することをお勧めします。
尾頭付きの魚の食べ方を学び、実践する |
作法内容は、会席料理ではなく社会人のマナーを学べる本の中にあった「和食のいただき方」を参考にしてプリントを作り、食事しながら説明をしました。現在は、子供向け指導用の書籍も出版されているので参考にしてみてください。また、給食食器メーカーが指導用に和食器の貸し出しも行っていますので、活用できるでしょう。
教育基本法改正により、教育の理念として新たに、伝統と文化を尊重する心を育むことが加わりました。和食は、長寿食ともいわれ見直されていることも併せて考えながら、給食指導や食育活動で取り上げる題材として有効です。日々の給食を含め「和食」をキーワードにしてみませんか。
大留光子=昭和53年より東京都内4区を経て平成21年度に栄養教諭として江戸川区に勤務。25年3月退職。現在は、学校給食研究改善協会調理講師の他、学校給食Web「おkayu(www.okayu.biz/)」のディレクターを務める。
【2016年1月1日号】