ご存じでしょうか。精神疾患による休職教員の割合が、学校種別で一番高いのは、特別支援学校であるということを(平成23年文部科学省調査)。
そこで、本号と次号(11月16日号)では、特別支援学校における教員のメンタルヘルスについて紹介します。前編は特別支援学校の現状と課題を捉え、後編はそれらの課題を解決するための糸口を探ります。
特別支援学校教員のメンタルヘルスの現状は、先に示したように、校種別では休職者の割合が最も高いです。平成19年の東京都の調査によると、他校種には休職者の男女差が見られますが、特別支援学校では男女ともに高い割合を示し、年齢別では40代が突出しています。
在職年数では5年目に一つの山があり、ピークは16~25年で、責任ある立場になり、業務内容が変わる時期ともいえるでしょう。
メンタルヘルス不調の背景として、特別支援教育に携わる教員がストレス要因として挙げているものは、上位から「業務の質」「事務的な仕事」「学習指導」。小・中・高は1位が共に「生徒指導」であるのに対し、特徴的です。
特別支援学校の業務には、様々な特徴があります。
まず、組織面では専門職(看護師、理学療法士、言語聴覚士等)が多く、小・中学校に比べ、分業化、専門化しており、複数担任制が基本で横の連携が常に行われます。小・中に比べ人事、組織ともに管理職の意向による変化が激しい職場です。
次に業務面の質です。盲、ろう、知的、肢体、病弱と障害種別によって指導内容は全く異なり、校内の異動でも教員を取り巻く環境は大きく変化します。子供の多様な特性への柔軟な対応が必要で、時と場所と人によって臨機応変な対応をチームとして迫られます。
特別支援学校には子供の多様な発達の数だけ、教育内容と方法が存在します。何より子供の安全確保のための細かな配慮が必要で、「いざ」というときは必ずあるため、緊張を保つ必要もあります。
これらの現状と業務の特徴に対し、現代社会における職場の課題も大きいと考えます。まず驚くのは児童生徒数の増加で、これによる課題が増えています。平成26年の文科省データでは、知的障害部門だけで児童生徒数が10年前の約2倍に増加し、病弱、虚弱部門では約5倍にも達しました。施設、設備の拡充、職員数の確保だけでは追いつかず、学校の新設が望まれています。
しかし、全国的に特別支援教育のための予算確保は難しいのが現状です。既存の施設や設備の中で、設置基準がないこともあり特別教室の転用等で対応していますが、教室の適正な収容人数を超えているのが現実です。様々な特性を持つ子供たちがクールダウンや安全確保のための空間が確保しづらい状況にあります。その他、調理施設の拡充ができず、教員が弁当持参で対応するなど、指導の基本に関わるところにも支障が出ています。
また、特別支援教育推進のため、地域におけるセンター的機能を充実させ、地域の小・中・高の支援にあたる役割を担っています。地域連携業務は多岐にわたり、支援の必要な児童生徒の早期発見と対応等、地域の教員の大きな力となっていますが、同時に校内業務の人的配置に影響を与えていることは否めません。
特別支援教育に携わる教員の現状と課題は、いかに広く深いのか、少しでも伝われば幸いです。
【2015年10月19日号】