中学校の教職員70名を対象に、厚生労働省の「職業性ストレス簡易調査票」(5分でできる57項目)を実施しました。その結果、2人に1人が「仕事の量的負担」「仕事の質的負担」「身体的負担」「抑うつ感」「不安感」「疲労感」「身体愁訴」「イライラ感」の8項目のストレス状態のどれかを慢性的に抱えているということがわかりました。
「人は環境によって活かされる」という視点に立つと、教員の教育活動を生かすも殺すも「教員を取り巻く環境次第」と言えるのかもしれません。
現代は「ほめる」「認める」という社会的な習慣が希薄化したような気がします。「誰でもほめられたい」‐もちろん、これは教員においても言えることです。ところが、教員の置かれている状況はとても厳しく、「苦情や不平不満は教員や学校に言ってもよい」という風潮の中にさらされているのが現状です。
もちろん、よりよい教育を求めるためには、教員と保護者が「本音の語らい」をすることは必要です。しかし「本音の語らい」と「あら探し」は全く違うものです。
担任の発表を、入学式で行う学校が多くあります。その際に保護者から「あたりだ」「はずれだ」という声が聞こえてくることがあるそうです。
「あたり」と評価された教員はよいのですが「はずれ」と評価された教員は、この瞬間から大きなハンデを背負って子供たちの教育に携わることになるのです。これは子供・教員・保護者にとってとても不幸な結果を生みます。
ここでも教員の「あら探し」をするのではなく、「この教員とは子供のよりよい教育のための運命共同体だ」とポジティブにその教員の強みや良さを探し出し、保護者と教員が「子供のよりよい教育のためのチーム」として機能していくことが必要になるのです。
保護者のカウンセリングをしていて、最近思うことがあります。それは、家族の関係性が希薄化し、学校や教員を「共通の敵」とみなし、希薄化した家族の関係性を維持する事例が増えているということです。
これをカウンセリングの世界では「問題の外在化」と呼びます。この結びつきは仮の適応ですので、実にもろいものです。よりよい教育環境をつくるためには、どういう循環が必要になるのでしょうか。ひとつ例を示してみましょう。
【教員(保護者)】のよいところ・強みを見る→【家庭(学校)】で共有する→【教員(保護者)】に伝える→【教員(保護者)】に自信がつく(自己効力感が高まる)→子供の【先生(保護者)】への信頼感が高まる→【教員(保護者)】の子供へポジティブな関わりが増える→子供が成長する→子供が【家庭(学校)】に結びつきの力をもたらす→【家庭(学校)】が安定する→【家庭(学校)】で【教員(保護者)】のよいところ・強みを見る余裕がさらにできます。
不思議なもので、この循環ができると教員・保護者・子供が信頼感のなかで、「弱み」を認め合い話し合える「絆」も生まれてきます。これらのポジティブな循環を作り上げることが、子供の教育環境の向上と呼べるのではないでしょうか。そのためにも、教員、保護者や地域の全てが「ほめて」「認め合う」ポジティブなつながりを持ち、「よい所取りの教育環境づくり」「強みを生かす環境づくり」を推進してほしいと思います。
それを子供たちに示していく必要があるのです。子供たちの将来は大人がつくるものです。
【2015年8月17日号】