学校現場における児童生徒を取り巻く危険を予測し対応することは、保護者と教員の信頼関係につながり、ひいては、教員の心の健康にもつながります。
そのためには、子供たちの情報が集まる仕組みづくりが必要です。保健室の場合を考えてみましょう。子供たちの心身の健康に関する情報は、保健管理としての健康診断(保健調査含む)、健康観察、健康相談、救急処置時などを通して集めることが可能です。そこに、校内巡視、学校行事、登下校の様子など、保健室での関わり以外の子供たちの様子も情報として追加されます。その他、教職員・保護者からは教室や家庭という限定した場面での貴重な情報が得られます。
これらの情報を養護教諭が統合的に取りまとめて、送り先である個々の教員または、組織へ、それらが必要としている子供たちの情報を渡すことになります。それらを受け取った各学年、部、委員会、学校全体が組織的に最大限に生かすことで、事件、事故を最小限に食い止める、または、回避できることにつながるはずです。
例えば、多くの学校で日々起こり得る事件、事故で、関係者(子供、保護者、学校関係者等)が多くなるのは、子供同士のけんかです。特に養護教諭に配慮が求められるのは、複数の子供たちや、または一方の子供がけがをしたケースになります。
その場合、けんかになったいきさつや経過についての聞き取りは担任や学年の先生に依頼し、養護教諭は集まった情報から迅速に的確な応急処置をして、医療に繋げるかどうかの見極めをします。もちろん、応急処置は対応の優先順序が重要ですが、余裕がある場合は関わった子供たちの負傷状況の問診から始めましょう。各自の既往歴、現在の健康状態、学級内の人間関係、保護者のことなど、瞬時に情報を整理し、なるべく早い段階で担任や管理職に伝えます。
一人でも受診をすることになった場合は、保護者の了解を得て、すべての子供たちが受診をするように手配をします。受診した場合は後日、治療費等の話し合いになることもあります。義務教育諸学校、高等学校、幼稚園等では、ほとんどの子供たちが加入している「日本スポーツ振興センター」の災害共済給付制度があります。
学校の管理下の事由によるもので、療養に要する費用の額が5000円以上で初診から最長10年間が給付の対象です。後遺症がある場合、その程度により1級から14級に区分されています。保護者はもとより、改めて管理職や担任などの関係者全てに正確な情報を伝えることで、保障される内容が共通理解でき、安心感=信頼となるでしょう。
しかし、突発的な事件、事故、自然災害等の被害も心配される中、教職員は最善の行動選択をし、日常の学校生活に戻ることに努力する必要があることはいうまでもありません。今、改めて学校危機管理のありかたが問われているのです。
危機管理は学校だけでは到底できるものではなく、学校全体で組織的な共通理解のもと、家庭、地域が一体となって取り組む必要があります。子供たちの安心で安全な学校生活のために、学校全体や教育活動にかかわる情報は「職員室」、心身の健康にかかわる情報は「保健室」と、各学校の特色を生かした上で、必要とする情報が集まる仕組みづくりがなにより大切ではないかと考えます。
【2015年7月20日号】