5年生のもちつき大会(上) 白山市地産地消課職員の話を聞く4年生(下) |
第58回全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会が8月3・4日に開催される石川県内の小中学校では、豊かな地場産物を活かした給食提供や地域の農協・漁協と連携した食育授業を展開。平成26・27年度に「スーパー食育スクール」に指定された白山市立松南小学校と輪島市立輪島中学校では、地場産物を積極的に活用した食育事業が行われてきた。その取組を一部紹介する。
白山市立松南小学校(村本邦子校長)では、市内でとれる米や梨などの地場産物を積極的に学校給食に活用し、家庭・地域とのつながりを重視した食育の取組を行っている。26年度は「自ら考え 食をえらぶ子~白山手取川ジオパークを舞台にした食育の実践~」をテーマに「スーパー食育スクール」として食育事業を展開した。
そのひとつが、学校・PTA・地域が連携して行った「松南食育フェア」。市の地産地消課やボランティア団体、地元農家の協力を得て全ての学年で食の授業を行った。「松任お話の会」による食べ物の話(1年生)、地元の特産物「剣崎なんば」の話(2年生)、梨に関する学習のグループ発表(3年生)、PTAとの餅つき大会(5年生)などだ。地域の人々との交流の中で、児童らは食に対する感謝の気持ちや健康への意識を学んだ。また、6年生が考案したオリジナル献立の給食提供やランチルームでの給食実施など多様な内容の授業を行った。
精進料理の体験をする生徒たち |
輪島塗などの伝統文化が根づく輪島市では、輪島市立輪島中学校が「つなぐプロジェクト~豊かな心と健康な一生~-輪島の里山里海の恵みに感謝する心の育成-」をテーマに食育事業を行った。
輪島塗に関連した学習では、輪島塗の食器を使用した和食給食、輪島漆芸美術館学芸員による漆器の講話を実施。他にも、石川県無形民俗文化財である輪島の伝統的海女漁の協力を得た「海女採りサザエ・アワビ給食」「海女による伝統的海女漁の講話」や、県立輪島高等学校・県立門前高等学校と連携した「地場産物(いしる・ギンバサ)を活用した料理の共同開発」など伝統文化を感じられる内容を実施。事業後の実態・意識調査では「食べ物への感謝の心を持っている」と回答した生徒は98・4%で実施前より1・6ポイント上昇した。
石川県内の小・中学校の学校給食現場でスチームコンベクションオーブン(以下、スチコン)の導入が進んでいる。
それに伴い、導入校では各地域の地元食材を活用したスチコンならではのレシピが多数生まれてきた。
そこで同県の学校給食研究会は、第58回全国栄養教諭・学校栄養職員研究大会の開催に合わせ、石川県内の小中学校の栄養教諭・学校栄養職員らが考案した、スチコンを活用した学校給食のレシピ集(DVD=写真下)を制作した。
写真入りレシピを収録 |
同研究会の竹中好美会長は、「構想から1年以上かけて制作に取り組んできたが、各地域の栄養教諭らの工夫がつまったレシピ集になっている」と話す。
スチコンの利点活用でメニューの幅が広がる
スチコンの大きな特長は焼く・煮る・揚げるなど様々な調理方法が可能で、衛生管理・アレルギー別調理がしやすい点にある。
熱時間も短いため、ビタミンCなどの栄養素が破壊されず、茹でる過程でお湯に溶け出してしまうこともない。
スチコンを導入したことで全体的に調理の効率が上がり、多彩なレシピの考案につながった」と竹中会長。地元食材の活用も進み、メニューの幅が広がった。
食材限定しない調理で地域性溢れる給食を
同レシピ集では主食、主菜、副菜、デザートの分野ごとに累計200品の写真入りレシピを収録している。全て石川県内の学校で実際に提供されているものだ。
一人分の材料やスチコンのワンプレートに並べられる個数、目安に加え、使用メーカーによって違いが出ないよう温度設定なども細かく記載。使用食材については地域や食材を選ばずに調理できるよう、学校給食で使いやすいものに代用可能なレシピを紹介した。
竹中会長は「スチコンの活用術は全国に広まってほしい。このレシピ集をヒントに各地域で特産物を活かしたアレンジ給食を作っていただきたい」と語る。
【レシピ例】ぶりのアプリコットソース、米粉のマフィンなど