病気休暇(=病休)に入るきっかけはいろいろありますが、原因は仕事に起因することだけでなく、職場の人間関係も大きく作用します。そこで、養護教諭の専門性を生かして教職員のメンタル予防にどのような役割を果たすことができるか、事例を踏まえて検討してみたいと思います。
▼事例<指導が批判に聞こえ、自信がなくなった>
臨採2年目の20代男性が、多くの場面で主任の指導を受けていた。出勤できなくなったきっかけは、本人が作成した指導案を学年で検討し修正を求められ、その後指導案が作れなくなったこと。締め切りを延ばしていたが、ある日の朝腹痛がひどくなり、布団から出られなくなった。
▼事例<病休に入るきっかけは、同僚の言葉>
50代女性は、学級内に発達障害児を抱えていた。対応が難しく、学級経営もうまくいかなくなった。3学期には学年の担任が入れ替わり学級に入るようになった。毎日頭痛や倦怠感があり出勤が辛かったが、皆に迷惑をかけている気持ちがあり、なんとか通勤していた。学年の同僚からは「あなたの指導力不足」「授業がよくない」等言われるようになった。なんとかがんばっていた気持ちがぷっつりと切れてしまった。
1:保健室という空間を生かす
【メンタル予防に果たす養護教諭の役割】 |
保健室という空間にいつも養護教諭がいるということは、安心して話ができる空間があり、話を聞いてくれる人がそこにいるということです。日頃から職場の人が来室しやすい雰囲気を作っておくことが大切です。そのために、いつもと違う点等、気付いたことを声かけするように心がけています。悩みや心配事があったときに、話しやすい関係を作っておくことは、職場に対する「安心感」につながります。
2:心身の症状を把握する
職場内でも養護教諭は心身の健康問題の専門家という認識があり、心身の症状や心配事を打ち明けやすい立場にあります。また学年や管理職と異なり利害関係がないので、弱音や愚痴を言いやすいようです。心身の症状を相談された場合は傾聴を心がけ、知識不足で答えられない時は、必ず調べて返答するようにしています。
3:コーディネーター的役割を果たす
相手の話を聞いた後「継続的に様子をみたほうがよいか」「管理職に相談し支援体制をつくるのがよいか」「すぐに医療機関につなげたほうがよいか」を見立てて、相手と一緒に今後の対策や方針を考えます。その場合、まず管理職に相談することを勧めますが、本人に抵抗のある場合は、①付き添う、②管理職に事前に話をする、③他の信頼できる教職員に話す(仲間を増やす)など選択肢を増やして、本人が安心して相談できるように支援します。
悩みや問題を抱える教職員に対して、養護教諭が本人の気持ちに寄り添うことができれば、孤立感から救われるかもしれません。また精神疾患の疑いがある場合は医療機関に繋ぎますが、病院によって専門性や得意分野が違うので、普段からいろいろな情報を収集するように心がけています。
休職者の予防や早期対応の視点からみると、管理職の理解と共に医療機関とのネットワークが重要になってきます。その担い手の一人として、養護教諭が産業医(健康管理医)や管理職と協力して、「安心して働ける職場の雰囲気作り」に努めてはどうでしょうか。