毎年、4月から5月の連休にかけて、職場不適応を起こして病気休暇に入る教員が発生します。そこで今回は、休職者予防の中でも特に職場適応について考えてみることにします。
職場適応には大きく分けて2つの側面があります。
1つ目は「仕事上の側面」です。当事者の教員が今、担当している仕事に喜びややりがいを見いだせるかどうか、つまり本人のモチベーションに合致した仕事かどうかという部分が影響を及ぼしています。
さらに、働き方が自分に合っているかどうかという問題も大きいと思います。例えば、介護しなければならない家族を抱え、自分の専門分野ではない部活動の顧問として長時間労働を強いられるような場合は、苦しい状況に追いつめられる可能性があります。
また別の角度からは、例えば、教頭になってはみたが、PCが苦手で仕事が滞ってしまうケースのように、求められているレベルの仕事をこなせるようなスキル(教育技術)や能力を持ち合わせていないため、メンタル不調に陥る場合もあるようです。
2つ目は「人間関係の側面」です。仕事自体はその人にあったものでも、職場の同僚とのコミュニケーション不全により、職場不適応を起こすケースが後を絶ちません。休職者の約半数が転勤1年目教員で占められていることからも、その実態が明らかです。
職場適応を考える際には、職場の勤務状況に関して、何か支障をきたしていないかという「事例性」を重視しています。例えば…。
①勤怠についてはどうか(無断欠勤などをしていないか)。
②通常業務が滞ることはないか(授業時間が始まっても教室に行かない)。
③提出書類の期限が守られているか。
④仕事上のミスが増えていないか。
⑤職員会議等の場面でおかしな発言がないか。
⑥挨拶・返事が返ってくるか。といった点がポイントになります。
これらの「事例性」に関して、もう一つ重要な視点は「以前はできていたことができなくなっていないか」を見極めることです。他人と比較することは、個性の問題になり、あまり意味を持ちません。
学校現場を振り返ってみると、4月から5月にかけては嵐のような忙しさで、管理職も教員各自もお互いのことを気にかける余裕がありません。前述の「事例性」の段階で問題解決を図っていれば連休明けの休職者を予防できるのです。
しかしほとんどの学校現場では、①不眠や覚醒に関して、②職員室でも一日中PCに向い誰とも話そうとしない、③子どもや同僚の前で情緒不安定、④急激な体重の増減等、「疾病性の問題」になってから報告が上がってくる状態です。この段階では治療の対象(3次予防)となり、医療機関に繋ぐこと以外は、学校現場にできることは限られてしまいます。
それだけに、報告のタイミング次第でかなりの数の休職者を予防できるのです。「報告が早すぎて、症状が悪くなることはありません」と強調します。
そして特に5月の連休までの間は、管理職自らがこまめに教室や職員室をのぞいて、一声かけてあげるだけで若手教員たちは安心するのではないでしょうか。