学校における熱中症予防対策が進んでいる。伊勢崎市立広瀬小学校の永山亘子養護教諭、(公財)日本体育協会・スポーツ医科学専門委員会委員長の川原貴氏、(独)日本スポーツ振興センター・学校安全部安全支援課課長補佐の藤山大祐氏の3氏にそれぞれの立場から話を聞いた。
-熱中症は、日頃の生活習慣の影響を受けることが多いため、睡眠や食事などについても指導を行うことが大切です。
本校では、PTAと連携して「早寝・早起き・朝ごはん」運動に取り組んでいます。その一環として、「すこやかカード」を配布し、家族で生活習慣について振り返る機会を設定しています。
また、熱中症が心配される時期になると毎年、休憩時には水分をとり、体育など野外での授業では、15分~20分ごとに給水タイムをとるなど、学校内で共通理解のもと、指導に取り組んでいます。そして、毎日実施している健康観察をこの時期は特に重点的に行い、朝だけでなく、体育や外で遊んだ後などは、授業の前に確認をするようにしています。
特に低学年は自分で体調を管理し不調を訴えることが難しいため、よく観察し、児童の体調に気をつけています。このようなことを、何度も繰り返し周知をすること、時期に合わせて全教職員で確認することが大切だと考えています。
-小学校から中学校にあがると体育の授業や部活などで運動量が大きく増えます。特に中学の1年時は環境の変化に慣れていない生徒が多いため注意が必要です。中1を対象にした「熱中症予防教室」の企画なども効果的だと思います。
運動会では見学席にもテントを設営するなど、日陰で休める工夫がされている |
熱中症の発症は部活動中が多いため、教職員だけでなく、各部長にも指導する機会を設定するなどして、部員の健康管理や発生時の適切な対応がスムーズにできるように指導することも必要だと考えます。何よりも大切なことは、自分の健康を、自分自身で守れるような生徒を育てることだと思います。
-本校では、水分補給をしやすい環境を整えるために、保護者の協力を得て、水筒を持参させています。特別教室や体育などの授業の際、持ち運びができるので、こまめに水分をとれるようにしています。また、9月に行われる運動会の練習では、校庭の各所にテントを設営します。休憩や説明はテントの中で行い、子供たちの体への負担を少なくするよう配慮しています。運動会当日はPTAの協力を得ながら見学席にもテントを設営し、日陰の場所を増やすように努めています。
-当協会で主催しているスポーツ指導者やスポーツドクターの養成講座では、カリキュラムに熱中症への対処方法などを盛り込んでいます。指導者は運動技術だけでなく体調管理の指導も怠ってはいけません。スポーツ少年団の指導者を対象に実施している、TV会議システムを利用した「ライブ・オン・セミナー」でも熱中症の知識を備えた指導者育成を目指しています。約30万人が受講していますが、練習中の摂取水分量などの質問が多く寄せられてきました。他にも要請があれば学校や教育委員会の研修会にも協会委員を派遣し講習を行っています。
日頃から危機管理を徹底することで、熱中症事故の発生を防ぐことができます。過去の事故から学び、高い意識を保ってください。特にスポーツの指導現場では運動量や児童生徒のレベルに合わせて、その集団の「休ませ方」の目安を検討しなければなりません。暑い中で無理にトレーニングをしても練習の効率が落ちてしまいます。体調を加味した効率の良い練習計画を立ててください。
日本体育協会=www.japan-sports.or.jp/
-学校の授業等で活用できるパンフレットやカード資料を作成・配布しています。教室内に掲示すると児童生徒への日常的な啓発につながります。前年度の傾向なども踏まえながら毎年内容を更新し、タイムリーな情報提供に努めています。部活動での活用を想定した「練習前の健康自己チェック表」「部活動チェック表」は、児童生徒自身が、体調の問題点に気づけるよう作成しました。
平成26年3月には学校災害防止研究委員会でまとめた「体育活動における熱中症予防 調査研究報告書」を発行し、医師や安全教育の有識者の知見と当センターで実施した調査を踏まえた、予防のポイントを示しています。これらは全てWEBからダウンロードできます。
当センターでは、1件でも熱中症事故が減るよう、今後も啓発・報告資料の提供を行っていきます。学校現場でもこれらの資料を活用し、指導に役立てて頂きたいです。
日本スポーツ振興センター=www.jpnsport.go.jp/
ライブ・オン・セミナーの様子 (講師:阿部雅行・㈱ボディチューン・パートナーズ) |
(独)日本スポーツ振興センターの 学校用カード資料 |