柳沢幸子氏 |
厚生労働省が行った平成28年度統計調査(食中毒発生状況)によると、細菌による食中毒発生件数のピークは7~8月に集中している。(公社)全国学校栄養士協議会副会長の柳沢幸子栄養教諭(軽井沢町立軽井沢中学校)に学校給食の調理現場における衛生対策のポイントを聞いた。
軽井沢中学校の献立を参考に、実際の作業工程に基づいて紹介する。
献立=ごはん、牛乳、すまし汁、鶏肉のマスタード焼き、れんこんのサラダ、でこぽん
-調理作業に入る前に、健康チェックや身支度、器具の点検などを行います。身支度をする際には髪の毛や爪の状態を確認しますが、白衣に付着したほこり取りは粘着クリーナーなどを使用すると便利です。
野菜の洗浄は汚染度の順番で(上) 調理中はこまめに時間・温度の計測を(下) |
外部から食材を納品する検収では、細菌やウイルスを調理室内に入れないように徹します。作業時は専用エプロンを着用し、食材の入った段ボール類は下処理室や調味料庫には持ち込まないように気をつけてください。
保存食は素手で触らない、包丁を使う場合は1品ごとに洗浄消毒する、なども徹底します。また、調理場に納品口が1か所しかない場合は野菜と食肉、魚介類の納品時間をずらすと検収時の混入・汚染などを回避できます。この献立の日は、野菜を7時半、鶏肉を8時半に受け取りました。
-食材の下処理では汚染の拡大に気をつけてください。肉と魚については、専用の下処理室がない施設では、あらかじめ検収室で下味をつけておきます。下処理後、調理に移るまでは短時間であっても必ず冷蔵庫で保管しなければなりません。野菜については、洗浄する際汚染度の低い物から順番に進めます。今回は、でこぽん、キャベツ、人参、れんこん、三つ葉、しめじ、きゅうり、もやしの順になります。キャベツなどの葉物野菜は葉を1枚ずつばらして洗浄します。全ての野菜は3回洗浄、もやしは特に汚染度が高いので丁寧な洗浄を心がけてください。洗浄の水槽は野菜ごとに洗って使います。
-下処理室から調理室に移動する際は専用の白衣・靴・エプロンに着替え、より丁寧に手洗いをします。まな板、包丁はしっかり洗浄し、包丁や裁断機の刃に欠損がないかも確認します。れんこんのサラダでは、特にドレッシングを攪拌する泡立て器の付け根が汚染されやすいので注意して洗浄しています。
調理時は特に喫食までの時間を短縮し、食品の温度管理に注意する必要があります。すべての料理の仕上げ時間と温度、和え物用の野菜をゆでる時間と温度、水冷する水の塩素濃度等をきちんと計測して記録に残すことも大切です。
衛生面が徹底された現場で作られた給食は配膳まで気を配られている |
-センターで調理する場合、調理終了後から児童の口に入るまでの時間をいかに短縮できるかがポイントです。
加熱後のすみやかな冷却を実現するスチコンブラストチラーの導入や、各学校への配送車両を増やすなど施設設備の充実も工夫のひとつ。保冷剤の活用なども考えられます。
配送の搬出入の時刻は記録し、短時間での配送を意識づけることも大切です。
また、多人数で調理をするため作業ごとにエプロンを色分けするなど、仕事は明確化させる必要があります。
機械・器具は可動式のものを採用すれば作業導線が交差する心配が少なくなります。