現行学習指導要領は、「社会に開かれた教育課程」を念頭にすべての教科等を「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」という3つの資質・能力の柱で整理し、「主体的・対話的で深い学び」の視点から授業改善の必要性を示しました。極めて大きな改訂であったと思います。
こうした指導要領の下、全国の学校が取り組もうとした矢先、新型コロナウイルス感染症が蔓延しました。学校現場では様々な制約に苦しみながらもGIGAスクール構想による1人1台端末環境も活用し、精力的な授業改善を行ってきました。
その結果はご承知の通りであり、学力の地域間格差は縮小傾向にあり、低位層の割合が減り高位層の割合が増えるなどの改善も見られています。我が国の初等中等教育は、質の高い教員の努力と熱意に支えられ、大きな成果を上げていることを改めて確認したいと思います。
一方で、様々な課題が顕在化しています。不登校の子供たちをはじめ、学びに向かうことができていない子供の増加や、習得した知識を現実の事象と関連付けて理解すること、AIでは不可能な概念習得や深い意味理解に課題があるなど、現行学習指導要領の理念や趣旨の浸透は道半ばです。
1人1台端末の効果的な活用も緒に就いたばかりであり、国の浮沈を左右すると言っても過言ではないデジタル人材育成システムの強化も喫緊の課題です。これらの課題に正面から取り組むには様々な施策を総動員する必要があり、教員の努力と熱意のみに過度に依存するわけにはいきません。
こうしたことを踏まえ、これからの時代にふさわしい学習指導要領の在り方について、先日、中央教育審議会に諮問をしました。
今後、「令和の日本型学校教育」を持続可能な形で継承・発展しつつも質の高い、深い学びを実現し、分かりやすく使いやすい学習指導要領の在り方や、多様な子供たちを包摂する柔軟な教育課程の在り方と、その実施に伴う負担への指摘に真摯に向き合うことを含む学習指導要領の着実な実現方策などについて、条件整備面にも留意しながらご審議を頂きます。
学校現場の声に耳を傾けながらこれらの検討を丁寧に進めて参ります。