SDGs未来都市に指定された北九州市で8月21日、第69回日本PTA全国研究大会がオンライン開催された。コロナ禍で中止された昨年の経験を踏まえ、「歩みを止めず進み続けるPTA」をテーマに掲げ、当日は事前収録の映像と会場を絡めたトークセッションを展開。「皆が当事者意識を持つべき」「PTAは学校を補完しWin―Winの関係を」などの意見交換で盛り上がった。最後に3つの決議を含む「大会宣言」(=6面)を採択した。
同大会を主催する(公社)日本PTA全国協議会(日P)の清水敬介会長が「コロナ禍でもできる活動の形を示す」と位置付けた今年の大会は、例年より内容と日数・時間を大幅に縮小。従来の講演に相当するゲストスピーカーそれぞれには、オンラインで事前収録。編集した映像を見ながら、会場ではゲストが意見感想を織り交ぜていくという工夫された展開。2時間半に及ぶ長時間であることを忘れて引き込まれる内容だった。
導入の「教育とは」と投げかけたテーマにゲストからは次々にユニークな回答があがった。
立花高等学校長・齋藤眞人氏は「その子(大人)の存在を無条件に抱きしめること。よかよか!の精神だ」。児童養護施設生徒の進学支援を行っている村上綾野氏は「施設の子供達はそれ自体が強さだと言える様々な経験をしている。この子供たちの未来を育むこと」。オンライン参加のレモンさん氏は「幸育(こういく)と個育。まずは個人が幸せになる、次に地域のみんなが幸せになること」と定義した。
イクメンのタレント・つるの剛士氏は「5人を育て、日々子供から教わりながら親も育つ共育。いきなり親になれる人はいない。そう考えた方が肩の力が抜けていい」。日P顧問・東川勝哉氏は「気づきと成長と『へぇぇぇ~』。遊びや経験からいろいろ発見し、興味を持って、学んだから成長がある。そこには必ず『へぇぇぇ~』があった。大人になってもPTA活動でも同じではないか」と提案。元校長で現在北九州市立子ども図書館長・河村信孝氏は、結論は「自立した人間の育成」であるとした。
「PTAへの期待」について、横浜創英中学高等学校長・工藤勇一氏は「教育はみんなが当事者のはず。社会がそうではないのは学校のせい。学校を良くするために学校運営の一部をPTAが担うべき。ただしPTAは色々な考え持つ人同士なので話し合うこと。そのプロセスがなければ当事者になれない」と強調。
映画「みんなの学校」の舞台となった小学校の校長だった木村泰子氏は「学校とPTAはお互いの違いを認め尊重し合うもの。学校の下部組織ではなく、Win―Winの関係、連携ではなく融合するもの」と提案。
学習指導要領に詳しい内閣府審議官・合田哲雄氏は「PTAは自分のために学ぶ、大人として成長する重要な場。『老害』とは年齢ではなく、学びをやめた人が大きな決定権を持って、社会の進歩進化を阻害することを言う。PTAは学びの必要性を実感するうえで得難い場」だと語った。
お笑いコンビ・EXITのりんたろー。氏は「学校や先生の足りないところをサポートして、子供と良いネットワークを作ること。先生が忙しく手が回らない時、サポート出来ることを提案できたら良い関係がつくれる」と提案。
また齋藤氏は「例えば今日のオンライン開催までにスタッフの皆さんは何十回という会議を重ねて今がある。そのことに思いをはせ感謝できる大人でありたい。『ありがとう』が飛び交う社会でありたい」との思いを語った。レモンさん氏は「何かが正解ではない。いろいろな人がいて、いろいろな価値観がある。だからPTAは『親塾』なのだ」と結論した。
教育家庭新聞 健康・環境・体験学習号 2021年9月20日号掲載