世界各国の高校生がSTEM技術を活用した多様な移動手段のアイデアを英語でプレゼンテーションするコンテスト「Made to Move Communities(メイド・トゥ・ムーブ・コミュニティズ)」で、かえつ有明高等学校(東京都江東区)のチームがアジア太平洋地域2位を受賞。5月30日に授賞式が開かれた。
同校はSTEM教育推進のための助成金15万ドルを獲得。主催はエレベーターやエスカレーターの製造を手掛けるオーチス。
本コンテストはSTEM教育と「インクルーシブ・モビリティ(多様な人々に配慮した移動手段)」に焦点を当てた国際プレゼンコンテスト。世界各国15~18歳の学生がチームを組み、社員の支援を受けてリサーチ・研究し、最終的に課題解決に関するプレゼンテーションを英語で行う。
2020年の初開催から4回目となる今回は、15の国・地域から240人以上の学生が参加し、社員200名人以上がメンターとして学生を支援した。
同チームは国内予選大会に参加した9校17チームの中から勝ち抜き、日本代表として世界大会に挑んだ。
世界大会のテーマは「都市における公園・緑地へのアクセスの改善を目指すソリューション」。身体的・地理的・経済的理由などにより、「移動」が困難となっている現状を改善する「インクルーシブ・モビリティ」を、STEM(科学、技術、工学、数学)を基に考案する。
かえつ有明高校のチームは、水素を燃料とする電池を搭載した公共バス内に植物を配置して、手軽に緑地体験ができるアイデアを考案。排出された「水」はバス内の植物の育成に再利用する循環型のシステムだ。3Dモデルも作成した。
チームのリーダーを務めた若原樂(わかはらりく)さんは、
「初めはなかなかアイデアが固まらなかった。メンターの社員の方から『実際に足を運んで話を聞いてみては』とアドバイスをもらい、東京都公園協会に取材に行き、実際の困りごとを明らかにしたり、バス関連の専門家にもオンラインで取材し、実際のイメージがわいた」と話す。
本取組を通じて、「論理的に考え、人に伝える力がついた。アイデアの発想だけでなく、どう実現させるか、どのように人に伝えるかまで深く掘り下げたことで、STEMは単に理系を指すものではないと考え方が変わった。将来は建築分野に進みたい。今回の学びは将来にも活きてくる」とふり返った。
2030年までに5000万人のSTEM人材が不足すると言われている。STEMの基礎を身につけることで急速に進化するグローバルな労働環境に備えることができる。STEMへの早期の興味づけや才能を開花する機会を提供し、次世代のイノベーター育成に尽力していく。生徒たちの情熱と独創性は今後の日本の発展に大きな貢献をもたらすだろう。
日本の青少年は自己肯定感が低いと言われているが、自分で考えて主体的に行動することが自信につながる。本校の生徒の挑戦が全国の高校生の刺激になればと考えている。企業による教育活動支援は未来への投資。生徒にとって得難い経験になった。