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プログラミング教育の一番の目的は「プログラミング的思考を身に付ける」ことではない―松田孝氏ウェビナー

2020年8月31日

プログラミング教育の一番の目的は「プログラミング的思考を身に付ける」ことではない――松田孝氏は、小金井市立前原小学校で校長を務めていた時期、プログラミング教育を教室に積極的に取り入れ、いち早く宇宙エレベーターの授業を公立小学校で扱うなど、初の試みを数多く実践し、学校改革につなげてきた。8月29日、フルノシステムズのウェビナーで「オンライン授業の誤解を解く!」をテーマに講演した。

 

■オンライン授業の

ポイントは非同期

コロナ禍で、オンライン授業を実施できる教育環境整備の必要性が社会的に注目を浴びた。

休校期間のオンライン授業は、ICT活用のイメージを共有しやすく、広く理解が得られ、GIGAスクール構想の前倒しという莫大な予算獲得につながった。

しかし、ICT活用はもともと、オンラインが大前提である。一斉授業でのデジタル教材提示に留まるものではない。

オンライン授業には、同期と非同期があり、ハイブリッドで展開すべきものである。

同期は、「いつもの授業をそのままWeb配信する」ことで終わってしまう危険がある。対面指導の一律・一斉授業をオンラインで再生産することは即刻止めよう。

非同期をうまく取り入れることで、Society5・0の学び方を展開できる。

Society3・0の教育の目的は、京都の北山杉のような美林を育成するイメージだ。日本が大成功してきた教育手法だ。

対してSociety5・0は、雑木林を維持するイメージ。多様な樹木が共生しながら、機能性、合理性、経済性を加味し合って最終解を求めるという革新性とガバナンス力が求められる。

コンピテンシーベースの学びには、同時双方向の学びだけでは不足。対面授業に加えて、遠隔授業やオンデマンドの動画教材を取り入れた授業モデルを展開しなければならない。

 

■自己調整力の育成が

問われている

Society5・0の学びで最も重要なワードが「自己調整力」である。学びのインプットではなく、アウトプットを活かし、自己調整力を育むことが何より重要だ。

市販の教材も活用しながら、基本は自学で展開し、分からないことなどの指導は個別で行う。

わからないときにすぐに質問できる点もICTのメリットだ。

ふり返りは各自で確実に行ってメタ認知し、自分の興味関心を把握。皆で多様な気付きを共有して刺激し合い、新たな学び、深い学びへ向かう。

これらの学びを円滑に展開できることがICT利活用の本来の目的だ。

自己調整力は2000年代からその重要性が指摘されていたが、当時、キャッチアップできていなかった。ICTを授業に活用して「共有」が容易になることで、改めてその重要性を再認識できた。

 

■プログラミング教育の一番の目的は

「プログラミング的思考を身に付ける」ことではない

小学校プログラミング教育では『プログラミング的思考を身に付ける』ことが、一番の目的ではない。真の目的は、Society5・0に対応できる資質能力の育成にある。「プログラミング的思考を身に付ける」という表現は、当時の社会情勢を鑑みて、わかりやすく同意を得やすい表現として着地した言葉である。

プログラミング教育は、Society5・0で生き抜く力を身に付けるための学び方を、すぐに体験できる。それはプログラミング教育が、失敗から学ぶこと、協働的に学ぶこと、目的を達成するために方法は1つではないことを前提にしているから。

既存の学習には、これまでの学習手法が確立されているため、転換には時間がかかる。新しい教科として学び方が確立していないプログラミング教育ならば、それができる。

文部科学省も、総合的な学習の時間や教科外で学ぶプログラミング教育の事例収集に力を入れている。プログラミング教育は、総合的な時間の中で取り組んでいけば良いだろう。

 

■整備から利活用のフェイズへ

GIGAスクール構想に伴う莫大な予算の確保により、行政としての仕事は終了した。

今後、環境整備から利活用のフェイズに向わなければならない。しかし多くの学校には、まだPCやネットワーク環境が届いておらず、学校現場は現実感がない、というのが正直なところではないか。

国のイメージと地方自治体、学校現場の意識のギャップがまだ埋められていない。

当初は、機器のトラブルも多く起こるだろう。少なくとも半年間程度は、行政からの手厚いサポートが求められる。前原小学校時代の実践でも多くのトラブルが起こった。ネットワーク環境を提供してくれたフルノシステムズの支援なくしては、学校改革や授業改善は実現しなかっただろう。ネットワーク環境は円滑な共有に重要だ。

それに加えて重要なのがこれまでの教育観の意識改革だ。これは絶対に必要。ここに、実践の質の差が生まれる。

差を埋めるために時間はかかるかもしれないが、教員は、子供のより良い成長に関わりたいという願いを持っている。その願いがあれば、差は埋まっていく。

 

■新しいリコメンドシステムを開発

 

著作「学校を変えた最強のプログラミング教育」(くもん出版)が大阪の書店で子育て本コーナーに設置されていた。自分の子供の将来を考えている保護者に賛同を得られたようで、大阪市内の学校のPTA会長が購入し、講演に呼んでいただいた(編集部注・書籍60冊購入で講演会プレゼントの特典を利用)。このほか総務省地域情報化アドバイザーの仕組みを利用してもらえれば、講演に行ける。(オンラインでも対応可。詳細は総務省Web)

現在、「IchigoJam」(いちごジャム)を使った実践の絵本を制作中で、1月くらいには出版する予定。小学校1年生でもできる実践内容とする。

子供の書き込みを分析して同じ興味を持つ子供同士のマッチングを図るなど、自己調整力を育みSTEMに関する自学を促すAIリコメンドコンテンツを現在開発中。

本仕組みを検証するモニター教員も募集している。

 

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