昨今、注目が集まる環境問題や水資源の社会課題の解決を目指して、信州大学・手嶋研究室はファミリー・サービス・エイコー㈱と産学共同でウォーターサーバー「swee」を開発した。PFOAやPFOSの除去も可能なカートリッジを搭載している信州発のウォーターサーバー「swee」を長野県のアンテナショップ「銀座NAGANO」に都内で初めて設置するにあたり記者発表会を4月10日に開催した。
エイコー社の石田幸司社長(左)と信州大学の手嶋勝弥卓越教授(右)
ウォーターサーバー「swee」のカートリッジには、信州大学の手嶋研究室が開発した注目の素材「信大クリスタル®」の一つである「重金属吸着材」を使用。手嶋勝弥卓越教授によると信大クリスタルとは信州大学が無機結晶育成技術「フラックス法」で育成した高品質な結晶。容器と加熱(エネルギー)源があれば結晶サイズや形状を制御した結晶材料を育成できるという。
信大クリスタルの効果について解説する手嶋氏
「信大クリスタル®」は、水に溶け込んだ有害な重金属イオン(鉛、カドミウムなど)を高効率に除去する一方、水に含まれるミネラル成分を残すことが可能。フラックス法結晶育成研究から生まれた「信大クリスタル®」は先鋭的な結晶材料であり、世界でも注目を集めている。
信州大学の技術である信大クリスタルを採用
手嶋研究室では無機イオン交換体の社会実装の第一歩として、2018年12月に携帯型浄水ボトル「NaTiO(ナティオ)」を販売開始。溶解性鉛まで除去することができ、どこでも「おいしく・安全」な水を飲むことができる。2022年11月には水道水以外に適応した、防災用携帯型浄水ボトル「NaTiO Squeeze(ナティオ スクイーズ)」を発売。タンク用水やプールなどの保存水に対応している。
現在、アフリカでは地下水に汚染物質であるフッ素が高濃度で含まれていることが問題となっている。タンザニアのマサイ族の居住地域では高濃度のフッ素を含む水が生活用翠として利用されており、住民には骨の曲がりなどの症状が見られる。手嶋研究室では現地へ赴き、小型の浄水プラントを設置し、有害な重金属イオンの除去を行った。
長野県では「信大クリスタル®」を日本酒づくりに活用。老舗酒造である丸世酒造店から酒づくりに不要なイオンや不純物を取り除いた「信州の水」にこだわった日本酒「勢正宗 信大仕込」などを販売。また、信州大学の各キャンパス、松本市、長野市、茅野市、佐久穂町、飯田市の公共施設、県内ホテルおよび県内企業事業所など、様々な施設にウォーターサーバー「swee」が設置され、無料でおいしい水が利用できるようになっている。
ウォーターサーバー「swee」は「EXPO2025 大阪・関西万博」の文部科学省主催イベント「わたしとみらい、つながるサイエンス展」の信州大学ブースで8月14日から19日に展示される予定。多くの人に「信大クリスタル®」の働きにより、おいしい水を届けることで、地球環境を考えるきっかけにしたいと考えている。
ファミリー・サービス・エイコー㈱の石田幸司社長は除去可能物質20種の家庭用浄水器「METASUI(メタスイ)」を紹介。1リットル当たりの金額はミネラルウォータが約56円、ウォーターサーバーが約125円なのに対し、METASUIは約3円に抑えられる。カートリッジには「信大クリスタル®」が採用されており、JIS規格で定められた除去対象物質(17物質)に加え、新たに浄水器協会(JWPA)で定められた除去対象物質(3物質)も除去できる。
エイコー社の石田幸司社長
家庭用浄水器「METASUI」で残留塩素を取り除いた水で米を研ぐことにより、ビタミンB1も破壊されず、ごはんの味も格段に変わる。また、米や野菜などに含まれるビタミンCを破壊するとされる塩素をしっかりと除去。栄養素もそのままに安心して食品を洗うことができるという。