アルサーガパートナーズは1月24日、千代田区立九段中等教育学校の1年生を対象にした生成AIワークショップの発表会を実施した。本発表会は、昨年11月に同社が同校で実施した生成AIをテーマとしたワークショップの成果発表の場であり、生徒たちが未来を見据えた創造的な取り組みを発表する機会となった。
九段中等教育学校は文部科学省のリーディングDXスクールに指定され、生成AIパイロット校として先進的な教育DXの推進に取り組んでいる。デジタル時代において不可欠となった生成AIの活用にもいち早く注目しており、2023年10月には同社が提供するGPTサービスを用いた教員向け「ChatGPT勉強会」を実施している。▶︎勉強会レポート
さらに、昨年11月には、中学生向け生成AIワークショップを開催。このワークショップでは、生成AIの基本的な仕組みを学ぶだけでなく、実際の活用方法について探究し、生徒たち自身が考えたアイデアを活かした「未来のアプリ」構想に挑戦した。▶︎イベントレポート
今回の発表会は、この生成AIワークショップの成果を発表する場として実施され、生徒たちはグループごとに「未来のアプリ」構想を披露した。
今回の発表会では、生徒15人が3つの班に分かれて課題に取り組んだ。また、発表会には同社の社員が審査員として参加し、それぞれの専門的な視点から各班にフィードバックを行い、生徒たちの学びを深めるサポートを行った。
A班は、まず班員の中であがった「美術の課題が大変」という悩みを解決するアプリを考案した。
課題解決のアプローチとして、A班はアンケート調査を実施。学年全体を対象に「美術の課題で困った経験」や「生成AIの使用頻度」に関する質問を行い、122人から回答を得た。また、アンケートによる定量調査に加え、定性調査としてインタビューも行い、より深い洞察を得た。
調査結果から、美術の授業で多くの生徒が重視しているのは「自分が気に入る表現を見つけること」や「作品をしっかり鑑賞して感じること」であることが分かった。これを踏まえ、A班は美術の課題において生成AIを使う際には、アイデアを生み出すためのサポートツールとして活用することが重要だと結論づけた。
画像生成などの機能を活用すれば、美術の課題をより簡単に仕上げられるかもしれない。しかし、それでは独創性や自分自身の表現力が失われてしまう可能性があるため、A班は「その前段階でアイデア出しを助けてもらうことが重要」と話す。この結論をもとに、A班が提案したのは「美術のアイデアを文章化するアプリ」です。生成AIの活用が難しいとされる美術の分野においても、独自の視点で課題解決に取り組んだ提案であり、その着眼点と工夫が高く評価された。
B班が提案したのは、自分たちの身近な「勉強についての悩み」を解決すること。さらに「未来のアプリとは何か」を考えた結果、「現在の社会にはない画期的な機能を備え、多大な効果が期待できるアプリ」であると定義した。
この課題を解決するために、B班はまず学年内の111人を対象にアンケートを実施。「計画通りに勉強を進めたときに、報酬をもらいたいですか?」という質問に対し、約8割の生徒が「はい」と回答した。さらに、インターネット上のデータを活用して「普段の勉強で最も悩んでいること」を調査。その結果、「やる気が起きない」という回答が最も多いことが分かった。
これらの結果を踏まえ、勉強のモチベーションを高めるために「勉強を進めるごとに報酬がもらえる仕組みをアプリに取り入れる」という解決策を提案。さらに、B班は課題解決に役立つアプリ機能として、8つの具体的な機能を考案した。これらの機能は、「勉強のやる気が起きない」という、多くの学生が抱える身近な悩みを解決するための提案だ。
B班のアプローチは、具体的なデータ収集と分析を基に課題を深掘りし、実現可能性の高い解決策を考えた点で意義深いものとなった。
C班は、まず「生成AI市場が世界的に拡大している」というインターネット上の調査結果を提示し、生成AIの重要性について説明。その上で、「テストの点数を上げるためにAIを活用したアプリを考える」という課題を設定した。
次に、日本の勉強方法について調査を実施。現在の勉強スタイルは、昔に比べて思考型の学習法よりも暗記重視の傾向が強くなっていることが分かった。また、競合他社となる既存の勉強アプリについて、その魅力的な機能や効果を調べ、表にまとめた。この調査結果を基に、多くの人に使ってもらえるアプリにするための工夫として、「無料で提供する」「どんな人でも使いやすいシンプルな設計にする」といった見せ方を考案した。
さらに、具体的な機能として、AIがユーザーに勉強のアドバイスや解説を提供する機能を提案。これにより、学習を効率的に進められるアプリの実現を目指した。様々な調査を通じて、ターゲットの視点に立った課題解決を考えた、実用的な提案となった。