鳥類は運動能力は生物の中でも別次元だ。ヒトが酸素ボンベを必要とする高度8000m以上のエベレスト上空を、ツルの群れは悠々と越えていく。鳥は哺乳類などとは別次元の「スーパーミトコンドリア」を持っているからだ。酸素消費が高く、活性酸素が低く、脂肪の合成が低い。この形質は約2億5千万年前に起きた大絶滅(PT境界)後の低酸素という強力な選択圧のもとで、原始的な爬虫類(双弓類)から獣脚類(恐竜の一群)が進化する過程で生み出された。現在では鳥が獣脚類の一部であることがわかり、鳥と獣脚類の距離は縮まっている。中生代の覇者となった獣脚類、そしてその後継者である鳥は、低酸素への適応を通じてなぜ驚異の能力を獲得することができたのか。地球の歴史と共に辿りながら、恐竜や鳥の身体構造や進化の歴史、能力の秘密に、独自の説を交え迫る。
著者の佐藤拓⼰氏は、東京⼯科⼤学応⽤⽣物学部教授で、専⾨は神経科学、抗⽼化学。また、本書では恐⻯復元画の国内第⼀⼈者で⼤学院デザイン研究科教授の伊藤丙雄氏が、代表的な初期獣脚類である「コエロフィシス」を、著者の学説に基づく新たなビジュアルとして描き下ろしている。
『恐⻯はすごい、⿃はもっとすごい!―低酸素が実現させた驚異の運動能⼒―』