北海道石狩市と東京都立杉並工科高等学校は「教育旅行を契機とした探究的相互交流に関する連携協定」を12月11日に締結、石狩市役所3階庁議室において締結式が行われた。これにより教育旅行など探究学習のあり方を体現するとともに、首都圏と地方部の相互理解促進を図る。
1962年に設立された都立杉並工科高等学校は、機械科、電子科、理工環境科を有していたが、新たにDX・GX人材を育成するため「IT・環境科」を2024年度に新設し、学科を統一。同学科2年生の教育旅行の訪問先として、洋上風力発電などの再エネ電源開発やGXによる産業振興に先行的に進む石狩市が内定したことで継続的な交流が期待される。
同校では従来の修学旅行よりも、「探究的な学習」の充実に向けた教育の場を提供する学校行事とする。事前・事後学習と旅行での“生の体験”を踏まえ、①課題設定、②情報収集、③整理・分析、④まとめ・表現を実施。これにより主体的に考え、行動する人材の育成が目指される。石狩市は立地施設を活用した教育活動に取り組んでおり、「再エネ」「産業振興」「持続可能なまちづくり」など、地方自治体における問題解決方法を探究するためのポテンシャルを有しているため、今回の連携協定が実現した。
今後、両者がこれらの目標に資する事業に取り組むことで、同校の実践的GX人材育成と環境・IT分野に関する石狩市内での教育活動の充実が目指される。加えて、多様な産業と再エネ電源が集積する石狩湾新港地域に「実学的な学びの場」という新たな価値を創出し、さらなる交流人口増につなげるとする。
今回の連携協定に先立ち、2024年10月26日(土)・27日(日)に実施された同校の文化祭では石狩市PRブースが設けられた。生徒たちが石狩市の地理的な状況や歴史・文化、観光スポット、飲食店、石狩湾新港地域などを調べ、展示品を制作。石狩川を遡上するサケの様子も工作により再現したほか、石狩観光協会の協力により特産品(イシカリー、サーモンパイなど)の販売ブースも設置。石狩市PRブースは次年度以降も継続する見通しとなっている。
2025年11月には同校のIT・環境科2年生約80人が教育旅行で石狩市を訪れる予定。
GX探究コースでは石狩湾新港地域を中心に展開される再エネ発電施設や再エネを活用する脱炭素型産業施設を見学するほか、上記の産業に関わる人たちへのヒアリングや意見交換を実施し、将来の国内のエネルギーや産業のあり方を探究。
地域交流コースでは市内の一次産業関係者との交流を深めるほか、ドローンなどの最新技術を見学。また、同校の生徒が市内の中学生に対する授業を展開し、交流を図る。
<コメント>
締結式には石狩市の加藤龍幸市長と杉並工科高等学校の中里真一校長が出席。次のようにコメントした。
【石狩市 加藤龍幸市長】
今回の連携協定において、石狩市はGXに関する学びの機会や市民のみなさまとの交流による豊かな体験を提供できればと思う。石狩市が、遠く離れた高校生の学びのフィールドになることをうれしく思っており、石狩市ならではの経験を提供したい。
杉並工科高等学校による教育旅行を石狩市民のみなさまにとっても良い機会としたい。教育旅行では同校の生徒による市内中学生への講座も予定しており、市内の子供たちにとっても大きな経験になるのではないか。
【都立杉並工科高等学校 中里真一校長】
本校は2024年度の学科改変により「IT・環境科」としてリスタートした。ITスキルと環境リテラシーは、これからの時代を生きる生徒たちにとって必須であり、教育現場としてもDX人材やGX人材の育成は重要な課題となっている。そのような人材を育てるために最も重要なことが「自ら考え行動できる」教育の実践であり、重要なキーワードが「探究心の育成」と考えている。
探求心を育成するためには、考えることと、実践・行動の繰り返し“Think&Challenge”が必要。そのためには、本物を見せ、体験させ、考えさせることが重要。本校の目指す教育と、石狩市が実践している再エネを中心とした企業振興やスマート農業などの取組は、非常に親和性が高いと感じ、これからの探求型の修学旅行に向けて、ぜひ石狩市と連携を結びたいと考えた。