クジラボは、全国の20代~60代の小学校・中学校・高校・特別支援学校の現役教員259人の教員を対象に、教職調整額引き上げ案に対する定量調査を実施。11月26日、調査結果を公表した。
文部科学省は「教職の魅力を向上し、教師に優れた人材を確保する」ことを目的に、教職調整額を現在の4%から13%に引き上げる案を提出。それに対し、財務省は残業時間を減らすことを条件に段階的に10%まで引き上げる案を公表し、議論が進められている。このような議論が行われているなか、渦中にある現場教員の意見を明らかにする目的で本調査は実施された。
現場の教員の多くが、教職調整額引き上げが「教員のなり手不足解消」には結びつかないと認識していることが明らかになった。また、33.2%の教員が教職調整額の引き上げは「喜ぶとも思わない」と回答している。
先生の仕事を辞めたいと思ったことがある教員は、回答者全体の97.9%(先生を辞めたいと「頻繁に思う」36.3%、「しばしば思う」34.0%、「1~2回ほど思ったことがある」21.6%の合計)。その理由の約7割が「業務量に対する負担」でもっとも多い。一方で、理由に「給与や待遇面」と回答する教員は35%だった。
先生の仕事を10年後も続けたいと思わないと回答した教員は、回答者全体の52.9%(「あまり続けたくない」31.7%、「続けたくない」21.2%の合計) と半数以上。この回答者に対し、「どんな制度・サポートがあると先生を続けたい意向が上がるか」を問うと、49.6%が「教育に直接的に関わらない業務の軽減・削減」と回答し、1位となった。「給与や待遇の改善」は14.6%で、1位とは35ポイントの差がある。
先生の仕事を10年後も続けたいと思わないと回答した教員に「教職調整額が増えることで、先生を続けたい意向に変化が生まれますか?」と質問したところ、83.9%が「変化は生まれない」と回答。
調査を行ったクジラボは、このQ2・3・4の結果から、給与や待遇よりも「働き方」に対する支援が重要であることがうかがえるとしている。
業務改善が重視される一方、働き方改革の進捗を引き上げの条件に含む財務省案には「可決されても働き方改革に期待は持てない」という回答が83.0%に上る。その理由として「残業の隠蔽に変わる」などの懸念の声や、「これまでも同じ議論はされてきた」などの諦念の声が多数寄せられた。
教職調整額引き上げ案は、「教職の魅力を向上し、教師に優れた人材を確保する」ことを目的に提出された。しかしながら本調査の結果、教員が求めるのは教育以外の業務の見直しや、業務量の軽減であることが改めて明らかになった。教員が行う仕事/教員以外が行う仕事を一層分化させ、教員が「子どもたちの教育」に集中できる環境を整えることに、予算の重点を置くことが重要であると示唆される。