1月31日、千葉大学アカデミック・リンク・センター「ひかり」にて、シンポジウム「外国人と日本人の子どもが共に学べる学校の実現に向けて-南米ルーツの子どもたちの事例から-」が開催された。
千葉県には、日本語指導が必要な外国人児童生徒数が2,000人以上いるといわれており、これは全国第8位の数字。本シンポジウムは、南米にルーツを持つ子供たちに焦点を当て、実際に子供と関わる千葉県域の公立学校教員や指導主事、千葉県市町村教育委員会を対象に、講話やパネルディスカッションを通して、彼らへの理解を深めることを目的に開催された。
当日は、Zoomウェビナーでも配信され、対面では45人、オンラインでは約200人が、南米ルーツを持つ児童生徒の現状についての講話や当事者の声に耳を傾けた。
シンポジウム冒頭では、渡邉誠千葉大学国際担当理事、カルロス・ヴェリョ在東京ブラジル総領事館 代理総領事、冨塚昌子千葉県教育委員会教育長より挨拶があり、新倉涼子千葉大学名誉教授より開催の趣旨説明がされた。
趣旨説明の後は「南米ルーツの子どもたちの文化・教育的背景」と題して、拝野寿美子神田外語大学准教授、小波津ホセ獨協大学非常勤講師より、ブラジルとペルーの教育制度・学校文化、在日ブラジル人、在日ペルー人の来日の社会的な背景などが説明された。新倉涼子名誉教授からは、多様な児童生徒を受け入れる教師が抱える葛藤の声が紹介され、また、外国人児童生徒が在籍する学校は、その多寡にかかわらず課題を抱えていることが報告され、児童生徒のみならず、受け入れる教員側も、戸惑いや葛藤を抱えていることが共有された。
パネルディスカッションでは、拝野准教授をコーディネーターとして、千葉県内小中学校の校長2人と南米にルーツを持ち、日本の学校で教育を受けてきた経験を持つ3人の、計5名のパネリストとともに、「受入・初期指導」「学校文化・規則」「保護者」「児童生徒の言語・文化」「進学」「偏見・差別」の6つのテーマについて、意見を交わした。パネリストからは、文化や言語の違いからくる戸惑いの経験やその時の率直な感情が語られ、実際に外国にルーツを持つ児童生徒を担当する教員らの理解が深まったことが期待される。
ディスカッションの最後には、南米や外国にルーツを持つ子供が全員同様に感じるわけではなく、個人や成長段階によって違いがあることが再認識され、コーディネーターの拝野准教授からは、「マニュアルの対応ではなく、個別最適化が必要とされている」とコメントがあった。