相模原市教育委員会と放送大学、大日本印刷(DNP)、ネットワンシステムズ、光村図書出版は1月30日、相模原市教育委員会におけるデジタル教科書を活用した共同研究事業の研究成果を発表した。
本共同研究の成果として、デジタル教科書を活用した授業では、児童生徒の主体的な活動時間と対話を行う活動時間が確保されたことが明らかになった。また、児童生徒の思考時間が増え、考えを可視化することで意見の交流活動が活性化したこともわかった。
2024年度にデジタル教科書が本格導入される。これに先立ち2022年4月から2023年3月までの期間、5者で、授業中のデジタル教科書の成果物・テスト結果等のデータを用いた指導と評価に関する授業実践共同研究に取り組み、デジタル教科書を活用した授業方法を開発し、相模原市の小・中学校で実証を行った。
本共同研究の目的は、デジタル教科書や、授業支援ツール等を用いた授業を通じた、教員の授業・指導方法の開発や評価改善の研究。加えて、収集した学習履歴データの活用や児童生徒の主体的に学習に取り組む態度の育成につなげることも目的とした。
本共同研究の成果として、デジタル教科書を活用した授業では、児童生徒の主体的な活動時間と対話を行う活動時間が確保されたことが明らかになった。
黒板の内容をノートに書き取る時間が減ることで、授業中の児童生徒の思考時間が増加。それにより、考えをデジタル教科書や授業支援ツール上で整理することができる時間も生まれ、その結果、お互いの意見を交流させる活動が活性化した。
また、デジタル教科書や「マイ黒板(本文抜き出し機能)」への書き込みが、デジタルデータとして残ることで、個人の学びの過程が可視化された。この書き込みや「振り返りシート」を学習成果物と捉え、それらをデータとして蓄積・可視化することで、児童生徒が自ら学習を分析し、自己調整する能力の育成につながる。
実証授業に参加した中学生からのデジタル教科書への評価は高く、87%の生徒から、学習に取り組みやすくなったという回答があった。
加えて、教育現場におけるデジタル教科書をはじめとするICTツールを用いたデータの収集・活用には、安定した通信環境が必要不可欠であるため、教育現場でのネットワークインフラ基盤は重要な役割を担う、と共同研究成果は指摘している。
今回の共同研究は、実践者である先生方の意欲とチャレンジに支えられ実施することができました。先生の授業改善に向かう意識が大きく変化し、何より、児童生徒が自ら学びに向かう姿や、児童生徒の思考や表現が活性化したこと等の姿が見られたことは、今回の実証の大きな成果の一つです。また、デジタル教科書や採点システム等を活用し、そこから得られた教育データを効果的に利活用することにより、先生の見取りを視覚化・分析し、指導や授業の改善等がますます進んでいくと感じました。このことを踏まえ、本市において、ICTの効果的な活用はもちろんのこと、児童生徒の資質・能力の育成に向けた教育活動全般においての教育データ利活用について、さらなる検討を進めていきます。
今回の共同研究に参画しているDNPは、相模原市をはじめとした複数の自治体において、翌2023年度も学習データの活用に関連する共同研究を行っている。これらの実証の成果を基に、教員や児童生徒が学習データを活用できるシステムの開発を行い、2024年度内の本格的なサービス化を目指すとしている。
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