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「未来を担う子どもと共に歩む確かな教育実践」をテーマに154編の教育論文が寄せられる~第40回東書教育賞贈呈式

2025年2月3日

教育現場の地道な実践活動に光を当て、優れた指導法を教育現場に広めることを目的に教育実践を募集する「第40回東書教育賞」(共催:東京書籍、公財・中央教育研究所)の入賞者が決定し、1月25日に贈呈式が行われた。2024年度は同賞の創設40周年を記念して「特別記念賞」が設けられた。

東書教育賞の受賞者(前列)と審査員

■小学校からの応募が例年より増加

「未来を担う子どもと共に歩む確かな教育実践」をテーマに全国の小中学校の教員や教育関係者から154編(一般部門133編、ICT活用部門21編)の応募が寄せられた。学校種では小学校106編、中学校45編、その他3編の応募があり、昨年度と比べて小学校の占める割合が大幅に増加している。

 

■栄養教諭の論文が中学校部門の最優秀賞を受賞

応募内容を教科・領域別に見ると、小学校は国語と総合的な学習が各13編、中学校は社会11編で最も多くなっている。各審査の結果、小学校部門は優秀賞3編、特別記念賞1編、奨励賞4編、中学校部門は最優秀賞1編、優秀賞1編、特別記念賞2編、奨励賞3編が選出された。栄養教諭の応募論文が最優秀に選ばれるのは初のこととなる。

 

■初めてタイトルに「生成AI」を含む論文が寄せられる

今回の応募論文では「個別最適」をタイトルに含む論文が5編、「自由進度学習」をタイトルに含む論文が3編あった。教科・領域では「特別支援」関係が9編あるなど、多様な児童生徒が学ぶ現在の学校の現状を反映していることが伺える。また、今回初めてタイトルに「生成AI」を含む応募論文が寄せられるなど、教育現場での生成AIの活用が進んでいることが予想される。今後、受賞論文は論文集としてまとめられ、全国の学校や教育機関などに配布される。


<受賞者・受賞論文>


◎小学校部門


『小学校部門 最優秀賞』

※該当なし


『小学校部門 優秀賞』


▽福井県坂井市立平章小学校 川端康誉教諭

地域との協働によるエージェンシーの育成(総合的な学習の時間)

地域と協働しながら、児童主体の長期的なプロジェクト学習を通してエージェンシーの育成を目指した取組。まず、実行委員・実行委員長を選び、学年全体を複数の活動チームに分けることで児童主体の組織作りを実施。1年目はチームごとに、丸岡城のパンフレット、郷土料理研究、丸岡城の観光ボランティア等を自分たちで企画運営。2年目はチームの活動のブラッシュアップを行った。活動の前後に実施した意識調査から「自分たちで活動を考え、実行に移すことはエージェンシーの育成に有効」であることがわかった。また、地域とのつながりを「総合的な学習」を通して構築することで、地域の活動に参画するようになり、地域と学校の双方に意味のある取組となった。


▽愛知県豊橋市立富士見小学校 水流卓哉教諭

自治的、自発的な学級文化の創造~3つの学級活動を柱として~(学級活動)

子供たちに必要な資質・能力として、より良い人間関係を形成できるようにするとともに他者と協働しながら自治的・自発的な学級文化を創造できるような集団の形成に取り組んだ。学級集団づくり年間指導計画を作成し、年間を見通した学級像や児童の姿を明確化。年間計画に基づき、学級会・当番活動・認め合い活動の3つの活動を学級づくりのシステムととした。集団や自己の生活をより良くするために話し合い、合意形成を図ったり意思決定したりする機会の増加につなげた。その結果、児童による自治的・自発的な集団活動となり、自分たちの思いや願いを実現するための行動化を促す取組となった。


▽大阪府高槻市立樫田小学校 西村大樹校長

防災宿泊行事を通して、学校・地域の活力を高める(学校経営)

同校は特認校制度を導入している小規模校。創立150年の歴史があり、地域に支えられながら地域社会における文化拠点として重要な役割を果たしてきた。過去に台風被害があり、主要な道路が通行できなくなるなど、生活が大きな影響を受けた経験を踏まえ、今年度から学校行事として防災宿泊学習(防災サマースクール)を実施。学校を軸に関係人口を積極的に増やすことをねらい、学校、保護者、地域、大学生、行政が協働して企画・実行し、学校と地域に活力を生み出した。


『小学校部門 特別記念賞』

▽兵庫県神戸市立若草小学校 久保田智子主幹教諭

児童と創る振り返りの手引き「めざせ!ふり返りの最上級者」活用(図画工作)


『小学校部門 奨励賞』


▽新潟県上越市立有田小学校 田中行人教諭

生活科実践における「児童と飼育動物が共に生活する場」の可能性(生活科)


▽石川県白山市立明光小学校 田中哲也教諭

持続可能な社会の担い手となる資質・能力を育む総合的な学習(総合的な学習の時間)


▽福岡県立小倉聴覚特別支援学校 恒成尚江教諭

教師主体でデザインする生活単元学習の授業づくり研修(特別支援教育)


▽広島大学附属三原小学校 松林泰弘教諭

政治をもっと身近に~「本物」との出会いを通して~(社会科)


◎中学校部門


『中学校部門 最優秀賞』


▽愛知県岡崎市立福岡中学校 永田祐己栄養教諭

集団での給食活動における個別最適な栄養摂取を目指した取組(教育全般)

同校は市内でも給食の残菜率が低いが、給食巡回時にご飯やおかずを極端に減らしたり増やしたりする生徒が目についた。本来ならば、各人にあった適量を摂取することで残菜がなくなることが望ましいことから、「集団での給食活動における個別最適な栄養摂取を目指した取組」を主題に設定。給食における「ご飯」の適量摂取に対象を絞って実践を行った。

実践の軸は2つ。①生徒1人ひとりが自身の適量を知ること、②「いただきます」を言う時点で各個人の適量が盛りつけられた状態をつくること。前者は家庭科、後者は学級活動の時間に授業を実施した。実践前と2回の授業後の計3回、それぞれ3日間ずつ給食時に「ご飯」の摂取量について計量・記録を実施。各個人の数値の変化から、個別最適な「ご飯」の摂取量に近づくことができたかを検証し、有意な結果を得ることができた。


『中学校部門 優秀賞』


▽滋賀県湖南市立甲西北中学校 山口朋久教諭

誰もができる 英語授業内多読 読める!楽しい!世界に!(外国語科)

かつて「読書法」は精読が中心だったが、これからの時代を生きる子供たちは多くの情報を素早く読み取り、概要を捉える必要があるため速度も重要となる。英語においても授業内多読を行う必要性は多くの教員が感じている。同校では多読図書を用いて10分間の授業内多読を実施。生徒は自分で読む本を選択するが、平易な英語で書かれ、同じ単語や表現が何度も繰り返し使われているので内容も理解しやすい。授業内多読は異なる文化に触れる時間として生徒から絶大な支持を得ている。ほとんどの生徒が英語を「読むこと」を楽しみ、テストでも内容理解面で大きな成果が得られた。授業内多読は、どの学校でも取り組むことが可能であり、多くの学校や生徒に広げたいという願いを込めた実践報告となる。


『中学校部門 特別記念賞』


▽上越教育大学附属中学校 岩舩尚貴主幹教諭

近代文学作品の魅力を主体的に追究する学習者の学びの姿(国語科)


▽岡山大学教育学部附属中学校 川上祥子教諭

個のウェルビーイングと多様性を高める中学校家庭科の授業実践(家庭科)


『中学校部門 奨励賞』


▽大阪府立久米田高等学校 重野金美非常勤講師

子ども・教職員・地域をつなぐ外国語科プロジェクト型学習(外国語科)


▽岡山県早島町立早島中学校 長嶺翔太教諭

特別支援学級におけるICTを活用したUDL数学科授業の実践(数学科)


▽茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校 中山幸昭教諭(社会科)

図形言語で歴史の授業に革命を!

 


【一般部門講評 審査委員長 東京大学名誉教授 市川伸一氏】

今回は第40回を記念して、従来の最優秀賞、優秀賞、奨励賞に加えて特別記念賞を設けました。特別記念賞は内容が優れたものであることに加え、これまでに複数回応募しているなど実績を加味して選びました。

小学校の部で優秀賞を受賞した、愛知県豊橋市立富士見小学校の水流卓哉教諭「自治的、自発的な学級文化の創造~3つの学級活動を柱として~」は、年間計画をもとに設定された学級会・当番活動・認め合い活動の3つの学級活動を通じて自主的に話し合い、合意形成や意思決定をする子供たちの姿を描きだした論文。児童は教員の通知表を作成するなど、ほほえましいエピソードが紹介されている。

中学校の部の最優秀賞は愛知県岡崎市立福岡中学校の永田祐己栄養教諭「集団での給食活動における個別最適な栄養摂取を目指した取組」。給食は本来ならば、体の大きさや活動などを考慮し、自分にとって最適な量を摂取することが求められる。この取組では家庭科の時間などに自分の適量について説明し、給食の時間には各自が自分で算出した量に基づいて計量して食事をとるようにしたことで、生徒の意識や行動が変化したことがうかがえる論文になっている。

 


【ICT活用部門講評 審査委員 東京工業大学名誉教授 赤堀侃司氏】

ICT活用に関する論文では、小学校部門で3編、中学校部門で2編が入賞した。今回の受賞論文を読んで、子供が主体となってICTを活用している様子が伝わってきた。教員と児童生徒の関係にICTが加わることでダイナミックな授業が展開されるようになった。

小学校部門の優秀賞は福井県坂井市立平章小学校の川端康誉教諭「地域との協働によるエージェンシーの育成」。OECDではエージェンシーを「変化を起こすために、目標を設定し、振り返り、責任をもって行動する能力」と定義している。論文では地元の丸岡城を中心とした地域おこしに向けて、自分で目標を設定して取り組んでいる様子が伝わってきた。計画を立てたら実践し、その実践を評価、問題がある場合は改善するなどPDCAサイクルができあがっている。

中学校部門の奨励賞を受賞した岡山県早島町立早島中学校の長嶺翔太教諭「特別支援学級におけるICTを活用したUDL数学科授業の実践」は特別支援学級の生徒にデジタルツールを活用することで学びを喚起させることにつなげた取組が評価された。

 

40回東書教育賞

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